2009年10月24日土曜日

伝説の役者と亜細亜の新星


週末の金土と立て続けで、東京国際映画祭に出向いてきた。
今回3本目となる作品は、故松田優作の“最初で最後の”公式ドキュメンタリー『SOUL RED 松田優作』(御法川修監督)。いまや伝説と化してしまった優作のフィルモグラフィーのなかから語り草となっているような名場面をふんだんに挿入しながら、彼のスピリットを継ぐ役者たち、過去の共演者、監督、脚本家らゆかりの人、そして優作の生き方を継承することになった二人の遺児のインタビューを織り込みながら優作の軌跡を追っていく構成。
実は今年は松田優作の生誕60年没後20年に当たるそうだ。もうそんなに時間がたってしまったんだと、色あせない彼の演技を見ながらあらためて時の流れの速さを実感する。直接、会ったことはなかったが、80年代に仕事上、彼の作品の数々に接してきただけに自分史と重ね合わせてみることができた。特に担当局だった日本テレビの『探偵物語』の映像に懐かしさで胸が熱くなる。
上映前の会見で、未亡人でもありこの映画のエグゼクティブプロデューサーでもある松田美由紀さんが、構想から9年間、突き動かされるようにこの映画の実現に傾注できたことに“宗教上だけでなく、生きてる人間にも神のような人がいるんだ”としみじみ語っていたのが印象的だった。
11月5日より新宿ピカデリー、6日より丸の内ピカデリーにて公開。



明けて土曜の朝一番から観たのは4本目となる台湾映画『陽陽(ヤンヤン)』(鄭有傑監督)。例年作品選びの中心となる「アジアの風」だが、今年観れたのはこの作品のみ。主人公ヤンヤンを演ずる主演の台仏ハーフの張榕容(サンドリーナ・ピンナ)のほろ苦い青春模様を描いたものだが、彼女の愛らしい笑顔の陰には妖艶な魔性が見え隠れし実に魅力的な女優さんである。手持ちのカメラ中心に揺れる画像と逆光を差し込んだカメラワークが中心で観ていてちょっと疲れてしまうが、逆に彼女のナイーブな心の動きが効果的に表現されている。鄭有傑監督は『シーディンの夏』『一年の初め』に続いて東京国際映画祭出品は3度目。今回の作品は巨匠・李安(アン・リー)の若手助成プログラムの作品でもあるが、撮影、音響に独特の才を見せる鄭監督だけに巨匠のお眼鏡にかなったのもよくわかる。
サンドリーナの魅力炸裂の作品ではあるが、個人的には彼女の義理の姉妹で恋人を取り合うことになるシャオ・ルー役の新人・何思慧もちょっと推したいところだ。二人は揃って今年の台湾のアカデミー賞・金馬奨の主演女優賞、新人賞にノミネートされている。
台湾映画というと、候孝賢や楊徳昌、蔡明亮という名がすぐ浮かぶが、若い才能も続々輩出している。いまいちメジャーになれない東京国際映画祭ではあるが、鄭有傑のようなアジアの若き映画人の作品が観られることにおいては個人的には捨てがたいイベントである。

4 件のコメント:

ask さんのコメント...

<(_ _)>

秋山光次 さんのコメント...

あ、いえいえ、こちらこそありがとうございました。チケット代どうしましょう?

ask さんのコメント...

またの機会で結構ですよ。録画視聴中、日本、伯剌西爾に先制許す@U-17

秋山光次 さんのコメント...

日本、結構健闘したみたいですね。

また動けるようになったら連絡ください。