2016年11月17日木曜日

週間呑みアルキスト10.1~10.31




●10月2日
隣の立ち飲み『明治屋2nd』のお客さんたち有志で千葉県流山まで鰻を食べに遠征。朝一のバリウム検診をすませ、出すものも出し、秋葉原のつくばエキスプレス駅に集結。目指すは知る人ぞ知る『江戸屋』。肝焼き、白焼きで日本酒(月桂冠!)を生でちびちびやりながら待つこと20~30分。デカい、安い、粗削りなうな丼がどどーんと供され大満足。遠くまで来た甲斐ありの日曜日の午後であったが、夕方帰宅後も動けないほどの満腹感。


●10月4日
熊本からFacebookでつながった高校時代の友人が上京して事務所に訪ねてきてくれ、ほぼ40数年ぶりの再会が実現、神保町の割烹『花乃舎』にて再会を祝して乾杯。懐かしくも恥ずかしい高校時代の思い出話でしばし若き日々の記憶に浸る。以前勤めていたK社の社史の仕事で夕方からは20代から30代の時代をともに過ごしたTT誌編集部の先輩NM氏を招き、当時我々が知らなかった秘話をはじめむかし話を聞く。なんともノスタルジックな日であった。その後、同席した当時のメンバーOT氏、IW氏、OK氏らと場所を移して近所の肉バル『O’s』で延長戦。


●10月5日
社史の取材第2弾で、TT誌創刊時の編集長だったIK氏と会うために、昨夜のメンバーとともに東戸塚の駅と隣接するショッピングビル内のとんかつ屋『かつくら』へ出向く。IK氏は80歳を過ぎてなお元気。記憶はちょっと混同することもあるが、それでも興味深い話を聞けた。大好きだった酒も」もうあまり飲めなくなった」とこぼしながらも楽しそうに焼酎を舐める。いつまでもお元気で。


●10月7日
デザイン事務所MM社のOG社長とK社MN氏、IW氏と会食。四谷荒木町のスペインバル『carino』にて赤ワインをがぶ飲み。久々にすっかり酔っぱらってしまい、終電にて帰宅。OG社長一行はさらにTAXIで夜の巷に消えていった。もう昔みたいに最後まで付き合うには体力も財力も持ちましぇ~ん。


●10月11日
事務所にてW杯予選のオーストラリアとのaway戦をビール片手にTV観戦。ブンデスリーガでも活躍中の原口が躍動。素晴らしい先制ゴールで絶叫するも、自ら相手に与えたPKで痛み分けに。勝ち点は伸ばせず相変わらず予選突破の厳しさは変わらないままだ。


●10月13日
お台場のTV局で企画会議に参加後、ライターのTM嬢と帰社途中の新宿で食事。ミロード内のロシア料理『マトリョーシカ』にてピロシキを頬張りながらロシアビールを試す。美味し。


●10月14日
市ヶ谷のK社にて社史の取材。TT誌の創刊メンバーのFD氏、TN氏、TH氏、KB氏らの先輩諸兄に集まってもらい座談会。終了後、ビルの1Fに入っている居酒屋『ニュー浅草』で再開を祝し乾杯。ここでも30年前の若き日々の思い出話がつきない。当時は苦しかったことも多かったが今となっては話をすればするほど笑いが巻き起こる。楽しいひと時。


●10月18日
赤坂の代理店にて打ち合わせ後、編集をお願いしているOK氏と、別件で近所で打ち合わせをしていた企画会社のSY氏、ライターNG氏と合流。まだ陽は高かったがオープンしていた一ツ木通りの
『ビストロ&ワイン デリカージュ』へ。かつて赤坂TBS局社内でラジオの仕事をしていたことがあったが、その時代と様変わりした街の風景に驚く。


●10月23日
この時期恒例となった若き知人のサックス吹きのKG君のライブで新宿三丁目の『Pit Inn』へ。定番のスタンダード、KG君のオリジナル曲を満喫する。演奏終了後は近所の『隨園別館』にて会食。ここの名物料理「合菜代帽」「水餃子」は健在。変わらぬ味に舌鼓を打つ。


●10月23日
バリウムを飲んだ後にウナギを食べたのがたたったのか、胃がん検診に要再検査のお達しあり。
内視鏡検査の予約を取る。欝々としながら前日から始まった東京国際映画祭で六本木へ。


●10月29日
早朝から千葉の旭市ちかくの東総運動場に全国高校駅伝千葉予選の取材。もう自分の孫のような選手たちが青春をかけた力走に心洗われる。


●10月30日
かつての編集部の後輩で早世したKJ氏の3回忌の墓参で用賀へ。同行のWS氏、SM嬢、TM嬢、NM嬢と用賀駅ビルの蕎麦屋『そじ坊』で献杯。




2016年11月3日木曜日

東京国際映画祭 終わりよければ…

第29回を迎えた今年の東京国際映画祭(TIFF)。今年はのっけからチケット販売のシステムトラブルという「事件」があって、一時はモチベーションが大きく下がってしまったが、それでも6作品ほど観ることが出来た。


1本目は台湾映画『ゴッドスピード』(原題・一路順風 鍾孟宏監督 許冠文、納豆主演)。麻薬取引の運び屋をやっている冴えない若者が、ブツの引き渡しでタクシーを使って台湾の南部の田舎まで出かけることに。何をやっても中途半端なチンピラ青年(ナードウ)と、タクシー(強引に乗せられた)の風采の上がらない運転手(許冠文)との奇妙なドライブが始まる。ダメダメな二人のはずまない会話がなんともいえずに可笑しい一方で、麻薬取引現場の黒道連中の裏切り、殺戮といったハードな場面が同時に進行する。一路順風とはいかぬアクシデントの発生で二人も思わぬ危機に巻き込まれてしまうのだが。
鍾孟宏監督作品はTIFF3回目の出品。前回の『失魂』で、香港のカンフー映画のスターだった王羽(ジミー・ウォング)を起用したのと同様、今回はやはり香港のコメディ映画のスター許冠文(マイケル・ホイ)を起用。香港映画へのリスペクトだけでなく、まったく彼らの土俵外の役どころで、演技者としての実力を引き出すその演出ぶりは見事。また、ロケーション含め独特の世界観の映像表現は今回もいかんなく発揮されている。今後も注目していきたい監督である。


2本目は香港映画『メコン大作戦』(原題・湄公河行動)。TIFFでは人気の高いアクション映画の巨匠林超賢(ダンテ・ラム)監督の作品。主演の台湾人俳優彭于晏(エディ・ポン)とは3年連続のタッグだ。今回はアジア五カ国の麻薬特別捜査チームが、メコン川流域に根を張るゴールデントライアングルの麻薬王と対決する。まあ、ストーリー展開はともかく、ダンテ作品の魅力は何と言っても大仕掛けのアクションに次ぐアクション。カーチェイス、ヘリの銃撃戦、爆破シーン、水上のモーターボートチェイスと手に汗握る展開が目白押し。映画の醍醐味ここにありと今年も楽しませてもらった。



3本目は台湾のドキュメンタリー映画『四十年』 (侯季然監督)。1970年代、日本同様台湾でも学生を中心にフォークソング(民歌)がブームになるが、違うのは彼らの当時置かれていた政治環境。米国をはじめ同盟国の中共との国交回復に伴う国連脱退といった背景の中、戒厳令下の省籍矛盾を抱え、先住民族、客家とルーツを異にする国民の民族的なアイデンテティの模索、というような彼らが内包する社会的な問題を表現することが主眼だった。当時、彼らを積極的にラジオで紹介し続け“台湾フォークの母”ともいうべき(日本でいえば落合恵子的な)陶曉清のプロデュースのもと、四十年の歳月を経過した彼らが再集結したライブの模様を中心に、台湾現代史を音楽から切り取っていく。
いままで、不覚にも彼らの楽曲を知らなかったが、次回是非とも訪台の際にはCDを買い求めたいと思う。



4本目はこうの史代原作のアニメ映画『この世界の片隅に』(片淵須直監督)のワールドプレミア。クラウドファンディングで製作され、声優がのんこと能年玲奈ということでかねてから注目されていた作品でもある。もちろんこうの史代の作品自体のクォリティはいうまでもなく素晴らしいので、それが動画になってどれだけ原作の持つ世界を再現されているかが気になっていたのだが、片淵監督の手腕で原作に更に息を吹き込んだような気がした。主人公と遊郭の女性とのからみがあっさりと飛ばされていたことにはちょっと残念だったが、おおむね原作にも忠実で十分満足できる出来だった。改憲勢力が声高に国防を叫ぶきな臭さが漂う昨今、こういう作品が是非とも多くの若い世代に見てもらいたいと願うばかりだ。


 5本目は香港映画『シェッド・スキン・パパ』(原題・脱皮爸爸 監督司徒慧焯)。岸田賞を受賞した演出家佃典彦の戯曲が原案。呉鎮宇(フランシス・ン)、古天楽(ルイス・クー)のダブル主演。認知症の父親が脱皮しながら若返っていくというシュールな親子劇。スラップスティック的でいささかついていくのが大変だったが、それはそれでシニカル且つブラックなウイット満載で観る者を飽きさせない。芸達者のルイス・クーの熱演ぶりは凄い。



最後の作品となったのは1957年公開のハリウッド作品『黒い牡牛』(アーヴィング・ラッパー監督)。
当時吹き荒れた赤狩りの迫害にあった脚本家ダルトン・トランボがロバート・リッチの名で執筆し、見事オスカー原案賞を受賞したことでも有名な作品だ。孤高の映画評論家故小川徹の本でこの作品を知り機に成りながらもようやく観ることが出来た。メキシコの牧場を舞台に少年と子牛の心の交流を描いたものだが、名カメラマンジャック・カーディフの手に寄る闘牛シーンの撮影がすごい迫力。赤狩りへの反骨心を盛り込んだ、トランボの足跡をたどるためにも必見の名作ではないだろうか。50年代のシネマスコープ作品をTOHOシネマズ六本木の巨大なスクリーン7で観られる醍醐味も映画祭の魅力でもある。