2013年8月19日月曜日

終戦のエンペラーの物足りなさ

 
まあ、ドキュメンタリーじゃないので、あまり目くじら立てても仕方ないけど、さも現代史の知られざる真実的な宣伝をされると、鼻白んでしまう。というかたとえ極東の片隅の歴史に無知な米国人ならともかく、ある程度の教育を受けた日本人なら誰しも知っていることばかりじゃないの。
映画『終戦のエンペラー』(ピーター・ウェーバー監督)を期待半分で見に行ったのだが、やはりまあこんなもんだろうという感想だった。

期待していたのはハリウッド的な撮影による焦土東京の再現、もしくはGHQ本部となった第一生命ビルや荻外荘(近衛邸)、厚木飛行場といったセットがどう組まれているのかということ。焼け跡時代を舞台にする映画はとかくセットに金がかかると聞いたことがあるので、邦画に比べて製作費的には潤沢であろうハリウッドのスケール感みたいなものには興味があった。当然SFXを多用しての1945年の東京を映しだしたわけだが、確かにこんなかんじだったのだろうかというイメージ作りにはある程度成功だったのかもしれない。またプロデューサーの奈良橋陽子さんの存在が大きかったのだろうが、現在の米国人が日本の占領時代に目を向けること自体が珍しいし、その時代の自国の評価をめぐっては、ニューディーラーたちの実験とその後の右旋回をたどる複雑な政治潮流を思えば、必ずしも制作するには面白い時代でもなかったかもしれない。

本国の公開時の反応を読むと、野心的な取り組みという評価とともに、侵略国の罪状を描かず日本に対して同情的すぎるという論評も当然のように起きたそうであるが、近衛文麿にアジアの侵略は近代の欧米に学んだと言わせたりするあたりに、奈良橋さんの気概も感じられる。泥縄式だった報復としての戦犯狩りへの疑問も盛り込まれたあたりは、まったく正義の味方という米国の価値観一辺倒ではない表現に好感はもてた。

でも、やっぱり全く架空のロマンスを話のメインに置くのもなあ・・・、ましてや主人公のボナー・フェラーズ准将が恋人の身を案じて爆撃目標を操作したなんてありえない設定はいかがなものだろうか?しかもフェラーズはじめ天皇を戦犯指定にせずに占領政策を円滑に進める施策に当たっては、戦後日本を共産主義の浸透に抗するのを一義にしてのイデオローグであったわけで、あたかもフェラーズが恋人も日本人で親日的な人だったからなどという表層的な描き方はちょっと納得しかねる。
外交官だった寺崎英成やクエーカー教徒の河井道さんなどの個人的人脈はあったものの、バターンボーイズのフェラーズが対日戦略上の知日派であったとしても必ずしも“愛する日本”のために奔走したわけではあるまい。
だとするならば、戦後の日本を民主主義の理想の実験場にすべく憲法草案や財閥解体をはじめ、明治以来の日本の旧弊に敢然と立ち向かい、その後赤狩りの前にパージされることになったニューディーラーたちの業績へもっと光を当ててほしい。ましてや、憲法改正が声高に語られるようになった現在ではなおさらである。
しかしいつになく映画館も中高年の観客も目立ち、そこそこ動員されているのはなぜなんだろう。中国韓国の歴史認識批判にうんざりする昨今の日本人のいらいらの反動というわけでもないと思うが。
配役的にはトミー・リー・ジョーンズのマッカーサーもなかなか雰囲気はあった。日本側では 近衛役の中村雅俊もよかったが、枢密顧問官・関屋貞三郎役の故夏八木勲の演技はみもの。奈良橋さんは関谷顧問官のお孫さんだけあって、フェラーズが宮中に会いに行くくだりはなかなか迫力をもって描かれているのは、この映画の見どころの一つ。

2013年8月14日水曜日

週間呑みアルキスト7.22~8.11

 
 
●7月23日
Jリーグはプレシーズンマッチまっただ中。前日のアーセナルの宮市亮凱旋試合(対名古屋)に続きこの日は、香川真司凱旋試合ということでマンチェスターユナイテッドが横浜マリノスと花試合。会社でビール飲みながらテレビ観戦。この週は東アジアカップはじめサッカーイベント目白押し。

●7月24日
T出版OK氏と会社近所に最近オープンしたそば割烹『弁慶』で軽呑み。珍しく鯨料理を出すのがウリのようでさっそくさらし鯨と鯨かつをつまみに一杯。鯨肉で育った世代としては懐かしい食感。シーシェパード何するものぞ。これでさらに百尋なんぞあれば文句はないんだがさすがに珍味までは無理か。

●7月25日
東アジアカップ第2戦の対豪州戦を缶ビールとともにテレビ観戦。女子の北朝鮮戦、セレッソ対マンU戦と3本立てのサッカーな1日。初戦の中国戦で3-1から追いつかれ引き分けた国内組男子代表。この日はスタメン全とっかえで臨むが、なんとか2-1でものにする。オージーも口ほどもない。『明治屋2nd』で引っかかって深夜帰宅。

●7月28日
東アジアカップ優勝をかけた韓国戦。案の定政治的メッセージやら、安重根、李瞬臣の横断幕の嫌がらせ。本当に辟易する民度の低さだがこんなやつら相手におめおめ負けて帰ってくるんじゃねえぞ!の叱咤の声が届いたか圧倒的にボールを支配されつつやっきになっている韓国を嘲笑うがごとくカウンターの2得点でタイトル奪取。あ~!酒うまwwww

●7月31日
旧友ED氏のお誘いで渋谷で会食。べトナム料理を所望したところ北か南かの選択に迷いながら、ハノイ料理の『ホァングン』に突撃。同じベトナムといっても広うござんす、サイゴン料理と一味違うエスニカルなメニューに舌鼓を打つ。2次会はED氏お約束の三軒茶屋。スナック『オロオロ』で台湾話で盛り上がった後、きれいどころいっぱいの『レーヌ』にハシゴ。聡明なチーママF美ちゃんに年甲斐もなく惚れてしまう♡

●8月1日
T出版OK氏と専大通りの居酒屋『雷門き介』で一杯。OK家のサイドビジネスである猫グッズのお店がいよいよオープンするとか。髪結いの亭主を目指すらしいが如何に?

●8月2日
曙橋のデザイン会社MM社で恒例のガレージバーベキュー。遅い時間に訪問したのだが、サザエ&焼き肉はふんだんに残っていて大汗かきながらこれでもかと食らいつく。KD社のかつての同僚でいまはすっかり偉くなってしまったOT氏、MN氏と久々に顔を合わし 遅くまで昔話に花が咲く。

●8月3日
仕事の参考に聞きたいことがあり妹を呼び出して地元呑み。この日の石神井公園は灯篭流しでいつになく人通りもにぎやか。駅北口のイタめしや『オステリアエンメ』を覗くとテラス席には客がいるものの店内はがら空き。聞けばエアコンが故障しているのでそれでもよければという。猛暑の中また他の店を探すのも面倒だから小一時間なら我慢もできるだろうと入店すると、スタッフ恐縮で色々サービスしてくれる。しばらくすると修理の人が到着しあっという間に直ったので結果オーライ。

●8月7日
定例の中国語学習飲み会。生徒グループの一人KB嬢がめでたくも誕生日ということで会社の近所のダイニング『エスぺリア』に教室を移し”生日快楽!”の乾杯。

●8月10日
TN社の幹部でかつてはKD社で同僚だったTN氏の奥様が逝去されお通夜へ。この日は記録的な猛暑で気温はなんと40度超え。通夜とはいえなかなか気温は下がらず喪服に身を包み大汗をかきながら下北沢の式場に向かう。TN社KD社ともにゆかりのある人も多く参列していたので、お悔やみをした後数名で下北沢南口の居酒屋(名前は失念)で献杯。

2013年8月12日月曜日

「椿姫」をスタッフ気分で楽しむ

今年は作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ生誕200年のメモリアルイヤーなんだそうである。
という予備知識があったわけではないが、猛暑から逃れる目的もあって久々に試写に出向いた。
ヴェルディメモリアルイヤー企画なのだろう、2011年の南仏エクサン・プロヴァンス音楽祭でのオペラ「椿姫」の制作過程を追ったドキュメンタリー映画『椿姫ができるまで』(フィリップ・べジア監督)を鑑賞。

 全編ヴェルディ作『椿姫」のリハーサル風景を克明に記録していくのだが、気鋭の演出家のジャン=フランソワ・シヴァディエの独創的な演出に対して、ヴィオレッタ役の世界最高峰の呼び声高いナタリー・デセイが、その表現に対する要求を自分のものとしてどんどんと形作られていく工程はたんなる記録映像にとどまらない劇的な面白さがある。

ルイ・ラングレ率いるロンドン交響楽団の楽団員や、もちろん出演陣もだがTシャツやポロシャツやらの普段着である。ところがリハとはいえ本格的に演じ、奏でているわけで実際に現場の舞台裏に立ち会って、あたかも自分が制作スタッフの一員になっているような錯覚に陥る。ナタリー・デセイの素晴らしき美声(!)を公演に先立って堪能できるのも、なんだか得したような気分になるから不思議である。

オペラにさほど造詣が深くなくても人間ドラマとしても十分に楽しめる作品だ。
9月28日からシアターイメージフォーラムにてロードショー。