2008年10月26日日曜日

東京国際映画祭

毎年、新しいアジア映画の上映を楽しみにしている東京国際映画祭だが、今年は開催期間前半が台湾旅行中だったためと、仕事の雑事が重なってしまったため、スケジュールを縫ってやっと2本だけ観ることができた。


一本は台湾の高校生たちの青春群像劇の『九月の風』(原題『九隆風』)。香港の名優・曾志偉が中・香・台でプロデュースした青春映画3部作の台湾編で、彼曰く一番よくできているということから単独での東京映画祭出品となった作品だ。1996年の台湾・新竹の高校が舞台。ちょっとワルだが皆仲良くつるんでいる9人組のほろ苦い人生の旅立ちを描いてゆくのだが、1996年という設定は台湾のプロ野球界で八百長事件が発覚し一大スキャンダルとなった年でもあり、主人公の少年たちも当時の台湾が野球人気が最高潮だった背景から全員が人気球団の時報イーグルス(その後、事件の余波で消滅する)のファンである。彼らの輝かしい青春の日々に影を指すようにドラマの進行とともに、実際のニュース映像で八百長事件がクローズアップされ、彼らの青春の終焉を暗示させるのである。監督は新鋭の林書字。新竹は監督の出身地であり、いわばルーカスの『アメリカングラフィティ』にも共通する原体験の映像化といえるのだろう。主役の台英混血の鳳小岳はじめ、張捷、王柏傑らの台流スターたちが等身大の高校生を熱演、こちらも皆良い感じにキャラが立っていてそれぞれに感情移入できる。また彼らを取り巻く初家晴ら女生徒たちも皆、大人への背伸びの反面揺れる心を内包する演技が本当に可愛く魅力的だ。
折から台湾では再び米迪亜T・REXという新球団の八百長事件が勃発しており、皮肉にもこの映画に妙なリアリティをもって観ることができた。


もう一本はマレーシア映画の『ポケットの花』(原題『口袋的花』)。マレーシアの公立小学校に通う中華系の兄弟にフォーカスを当てて、マレー人との民族融和の中で暮らしている子供たちのほのぼのとした日常を描いたもの。監督も中華系の若手監督・劉城達(リュウ・セン・タック)。いわばマレーシア版の『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』といった感じの作品で、子供たちの周囲のさまざまな民族の大人たちがまた皆どこかネジが緩んだ人ばかりで可笑しい。決して幸せな環境ではない子供たちなのだが、彼らの行く末にあまり不安を感じさせないところが、マレーシアというおおらかな東南アジア的な国柄も感じさせる。映画的にはさしたるドラマは起こらないものの見終わったとき心が和む、そんな小品である。

今年は残念ながら2本だけしか観ることができなかったが、それは何もこちらのスケジュールの問題だけではない。映画祭の「アジアの風」部門のキュレーターが従来の暉峻創三氏が変わってしまったせいか、香港、台湾の作品がぐっと減ってしまったことも一因ともいえる。出品国のバラエティが富んだのは良いが、韓国映画偏重のきらいもあり、このあたりは台湾・香港映画ファンとしてはいただけない。それからメーン会場を六本木ヒルズに移して3年余りたつが相変わらず映画祭ムードが皆無の一体感の無さ、寒々しさは何とかならないのだろうか?

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