2013年1月16日水曜日

大島渚


年末に故小川徹の映画評論集『橋の思想を爆破せよ』を読んでいたばかりだった。戦闘的かつ孤高の映画評論家が、昭和42年に記したこの評論集の中で「われらの作家たち」という項に新藤兼人、大島渚、吉田喜重、武智鉄二、羽仁進、黒澤明をとりあげそれぞれ論評されていたのだが、特に大島については『白昼の通り魔』『日本春歌考』の2作品にスポットを当て、「戦後世代の政治世界への裏切りと、性の思想の関連において、かつてないほど自己を作品の表面に登場させてきた、といいうるのである」と熱く分析している。当時公開直後だっただけに小川の受けた衝撃も大きかったのだろう。

小川の独断に満ちた裏目を読んだ論評にはいささか鼻白む面もあるが、彼の本がきっかけで病床で闘病しているという戦後安保世代の映画監督の作品をもう一度観てみたいと思っていた。昨日の大島渚の訃報はその矢先のタイミングで少なからず驚かされたが、特にテレビのニュース等でことさら紹介される『戦場のメリークリスマス』『愛のコリーダ』といった大監督になってからの作品ではなく、革命運動を志し挫折し映像表現に自身とその世代の葛藤を投影させた松竹時代からATGに至る若き頃の作品の再評価をこそが、3.11以降に生きる我々に必要な気になってくる。

追悼ということもあるが、手元にVTRで残してある『青春残酷物語』『日本の夜と霧』のあたりからもう一度見直して見たいと思う。








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