2009年2月28日土曜日

哀しみのボディスラム


往年の名プロレスラー、85歳のバーン・ガニアが養護施設内で97歳の年寄りを投げ飛ばして死亡させたとして殺人容疑で調べられているというニュースにいささか驚かされた。バーン・ガニアと言えば馬場とも鶴田とも戦い“ミネソタの猛虎”の異名をとった昭和プロレスを代表するパワフルな外国人レスラーだったし、プロモーターとしても幾多の名選手を送り出したプロレス業界のドンでもあった。
そのかつての大スターが認知症になって、施設内でそりの合わなかった老人にかねてから“得意技”のスリーパーホールドで締め上げたりしていたそうである。今回それがエスカレートしてボディスラムでも見舞ったのだろうか。
そうなんだよな、当たり前だけどどんなに強い男だって認知症になってしまうんだよな。しかも85歳の爺さんとはいえ元レスラーが暴れりゃやはり相当威力はあるはずだ。殺人容疑といったって責任はよもや問えないだろうけど、殺されちまった側は同じボケ老人とはいえたまったもんじゃない。
この殺された老人は一説によると第2次大戦でナチの収容所を命からがら脱走した人という経歴の持ち主らしい。そんな大変な人生を過してきて最期がこんな死に方だと死んでも死にきれまい。

ニュースに接したときは不謹慎ながら思わず笑ってしまったが、決して笑い事ではない。
現実に即してみても介護施設内での患者による問題行動、暴力や窃盗、はたまたセクハラにいたるまで様々な事件はあると聞く。給料に見合わない重労働でただでさえ慢性的な介護職員不足が問題となっているなか、さらに危険が付きまとうということならば本当にやってられないという悲鳴が聞こえてくるのも良くわかる。また年老いて脳の機能が衰えようと、どこかその人の人生の断片が消えないことにいいようもない哀しみも感じる。

生きながらえても尊厳ある終末を迎えられることができるのは本当に難しい。
バーン・ガニアのこの事件にはその背後にある「老い」の問題をいろいろと浮き彫りにしてくれる。

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