2009年1月15日木曜日

若大将はペリー・コモなのである


最近、パチンコのCMで時ならぬ露出している加山雄三。御歳71歳のご存知元“若大将”のコンサートを昨夜ひょんなことから観に行く機会があった。
昔はそりゃ世代的にも当初は怪獣映画のつまみだった“若大将”シリーズにすごく夢中になったし、実は日本のアーチストでは初めて自分のおこづかいでシングル版レコードを購入したのも小学校5年生のときの『君といつまでも』である。東宝スター時代の黒澤作品『椿三十郎』、『赤ひげ』や、成瀬巳喜男の晩年の『乱れる』『乱れ雲』も後追いで観た印象深い好きな映画だが、なんと言っても若い頃の加山雄三といえば憧れの人だったことは確かだ。
そんな思い出はあるにはあったが、しかし、ここ何年かすっかりその存在自体が頭の片隅に浮かぶことも無く、いわば忘れていた人だったといえる。
それが、いきががりとはいえコンサートに招待されたとき正直“いまさら”感を少し感じたものの、仕事に通じる可能性もあったので会場の上野・東京文化会館へと重い足を運ぶことになったのである。

このクラシックの殿堂でなぜ若大将かというと、文化会館の音楽監督・大友直人(東京交響楽団常任指揮者)のプロデュースで作・編曲家の千住明が加山の持ち曲をフルオーケストラのスコア化した、シンフォニックツアーということからである。
多彩な才能で知られる加山には、弾厚作としてピアノコンチェルトも描いているわけだが、所詮歌える俳優の余芸とたかをくくっていたので、東フィルや大友が大真面目で『君といつまでも』を演ったところでどうよといった先入観もまだどこかにあった。
しかも詰めかけた(ほぼ満席!)観客たちの年配度もかなりのものがある、普段観に行くオヤジロックのコンサートに増してジババ度はかなり高いが、それでも往年の人気の片鱗は十分感じせる。

しかし、そのような先入観はコンサートの幕が開いたとたん打ち砕かれた!
『夜空の星』のオーバーチュアのあと、『夜空を仰いで』を御大が歌いながら登場したときは思わず“カッコええ!”とうなり声を上げつつ総毛立ってしまったのだ。
恰幅の良いタキシード姿!フルオーケストラで昔よりずっと渋みを増した声で次々と自作のヒット曲を歌っていく。そのエンターテナーぶりはまさにペリー・コモ、シナトラを彷彿させるといっても過言ではない。日本人でいま、スタンダードをこれだけ存在感を持って、ぶれることなくオーケストラバックに歌える人はそんなに思い当たらない。壇上に呼ばれた千住明(慶応の後輩でもある)の、“若い僕らが死んだ後も後世に残るスコアを残したつもり”という談も全然大げさには思わなかったほどだ。大友いわく、以前実際に演奏した楽団員がその後自腹切って地方公演まで追っかけた、というくらい演奏する側にも若大将マジックは強烈な輝きを放っている。まさしくオーラとはこのことだろう。

しかし耳に親しんだ曲の歌詞が次々と口をついて出てくるのに我ながら驚く。目を閉じれば田沼雄一の名シーンが脳裏を駆け巡る。いやあ、本当に実にエバーグリーンやね。
アンコールでの『旅人よ』の大合唱で思わずウルウルしてしまったのも単に自分が歳をとってしまった証なのか?たとえそうであったとしたってやはり若大将は同時代を生きてきたものにとって永遠であることに違いない。
来年、加山雄三は芸能生活50周年を迎えるそうである。
偉大なり“若大将”!

4 件のコメント:

ask さんのコメント...

「キミにつくった歌だよ」と歌い始めたのに2番から星由里子がハモる台本に、「こんなのおかしい」と反駁した(それが出来た)若大将。ゴールデンの番組で(一瞬とはいえ)ビートルズのミシェルを三味線で弾き語る若大将。

思うほどお坊ちゃまでもなく、黒澤や三船にもなんとか伍し(スクリーン外でも)、意外と肝の座った人かも知れませんねぇ。

数年前のトリビュート・アルバムでも意外な(!?)人気と人脈と人望に意表をつかれる思いでしたが、千住音楽・大友指揮とはまた最強の人選。

秋山光次 さんのコメント...

ビートルズ来日のときも無謀にも自分のLP聞いてくれと部屋に訪ねた逸話もありますからね。本人も子供が赤ん坊の頃誕生会やった後、お店に子供忘れてきたというエピソードしゃべってたから、ちょっと長嶋さんみたいな人なのかもしれません。

大友さんは父君のフルムーンのCMで音楽担当だったそうです。加山さんとは元々親しかったらしいけど、加山さんのMCで“大谷さん”と呼ばれて苦笑していたwこの辺も長嶋さんぽい。
千住明は塾高時代生徒会やっていて文化祭に呼んだとき以来、そのオーラに圧倒されてしまったそうです。

ask さんのコメント...

(今頃すみません)

「大谷さん!」
は紅白での「少年隊の仮面ライダー!」
がフロックではない(!?)ことを証明するエピソードですね。すばらしい。

そんな加山さんの、誕生パーティ取材で入場時に思いっきり御本人をシカとしてしまったのは、懐かしい想い出だ…(恥)

秋山光次 さんのコメント...

仮面ライダーってありましたねえwww

加山さんの誕生日で本人シカトする取材記者てーのもなかなかの大物振りですね。それとも西北大学出身としては京南大学への対抗心からですか?