2012年3月17日土曜日

感情移入できないのは?


今週観た試写は『アンネの追憶』(2009年 イタリア)。
これまでアンネ・フランク一家の隠れ家での生活は「日記」を通して知られていたが、その後アウシュヴィッツからベルゲン・ベルゼン収容所へ移送され15歳9カ月で亡くなるまで、どういう過酷な収容所生活を送ったかを描いた作品である。彼女の友人で収容所から生還したハンナ・ホスラーの追想「Memories of Anne Frank」をベースに映画化された。監督のアルベルト・ネグりン自身もモロッコへ亡命したユダヤ人2世だそうだ。全編、ホロコーストの告発と人間の原罪への問いに満ちた映像に貫かれていて、映画の冒頭のアンネのはじけるような若さに満ちた日常と、アウシュヴィッツ護送後の過酷な姿の対比はなんともいえずに心に響いてくる。
ただ、主演の新星ロザベル・ラウレンティ・セラーズは確かに熱演なのだが、(ことさら悲惨さを強調することもないのだろうが)その若さの魅力自体が後半の収容所生活のリアル感を若干薄めてしまっているのは仕方がないのかもしれない。ただ1959年のジョージ・スティーブンス監督の『アンネの日記』を中学生の頃初めて観た時の感動に比べればいまひとつ感情移入できなかったのは、歳を経て自分自身の感受性がすっかり鈍ったということなのだろうか。学校の机に“それでも人間の善意は永遠に失われないと思っています”という彼女の言葉を彫刻刀で刻んだりしたことをふっと思い出した。それにしてもあの時のミリー・パーキンスは本当に美しかったが、その後作品に恵まれなかったのも、アンネの清純なイメージが強すぎたからなのかもしれない。


今週観た試写2本目は『恋と愛の測り方』(2010年 米・仏)。ニューヨークを舞台にキ―ラ・ナイトレイとサム・ワーシントンの若い夫婦が、昔の元カレと、同僚の女性と、お互いによろめいてしまう一夜を描いたちょっとホロ苦いラブストーリー。監督・脚本はテヘラン生まれのイラン系!米国人マッシー・タジェディンという女性。しかしなあ、ダブル不倫とはいえこんな凡庸なストーリーを2時間近くも見せられてもなあ…。これなら最近のNHKの『セカンドバージン』とか日本のテレビドラマの方がより手が込んでるぞ。ニューヨーク市の映画ファンドを利用するためだけ撮っちまったんじゃなかろうか、と思わず邪推したくもなるな。あえて収穫をあげれば旦那の浮気相手のエヴァ・メンデス(『最後の恋のはじめ方』)は好みのタイプかも。深夜のホテル内のプールでのラブシーンはちと萌える。

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