2013年1月9日水曜日

多幸感あふれる『鴛鴦歌合戦』



2013年初の映画鑑賞は、ミュージカル大作『レ・ミゼラブル』だったが、2本目もミュージカル。といっても趣は全く異なる昭和14年の日活作品『鴛鴦歌合戦』(マキノ正博監督)である。片岡千恵蔵、ディック・ミネ、志村喬、市川春代、服部富子といった面々が歌い演じる時代劇オペレッタということで、当時のお正月映画として公開された作品。貧しい長屋に暮らす浪人と町人の娘に、金持ちの商家の娘、骨董マニアの殿様が加わって恋のさや当てをするという他愛ない内容だが、底抜けに明るく、心浮き立つような作品となっていて、迫りくる戦争前の暗い世相の中で、その不安をつかの間忘れさせて欲しいという当時の庶民の思いが伝わってくるようである。以前から映画ファンの間ではカルト的な人気を誇っている快(怪?)作であり、DVD化されてもいるが、今回神保町シアターの「日活映画100年の青春」の企画としてフィルムセンターのアーカイブからリプリントされて、英語字幕入りで観る事ができた。

この作品は戦時下日系米国人の収容問題を描いた1990年のアラン・パーカー監督の『愛と哀しみの旅路』に使われたことで初めてその存在を知ったが、アラン・パーカー作品中では当時の時代考証的に挿入されたものだろうが、パーカー自身はこの作品をどう評価したのかも気になるところだ。

『レ・ミゼラブル』で出演陣の歌唱力に触れたが、この作品もなかなかどうして千恵蔵も、志村喬も本職のディック・ミネや服部富子を相手に素晴らしい歌声を披露。志村は当時ディック・ミネに歌手デビューを薦められたという逸話があったらしい。やはり時代や国を超えてもスターのスターたる素養は素晴らしいものである。

年明け早々、洋邦のミュージカルを楽しんだが、今年も世相のごたごたを忘れられるような作品にどんどん出会えることを願うが、映画で夢心地にいるうちに世相が再びもと来た道に戻る、なんてことが無いように心しなければならないのだが。

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