2010年7月19日月曜日

週間呑みアルキスト6.28~7.18


ワールドカップ期間はあまり呑みアルキも控え、もっぱら家呑みに徹する。サッカーを観ながらちびりちびりやるにはやっぱりワインがいいと、近所のスーパーで開催国の南アフリカ産のワインを買い込む日々。赤はピノノワール、白はシュナンブランのかなりのレベルのワインが600円前後で帰るということもあって、われながら感心するほど空き瓶がずらりと並ぶ結果に。深夜に呑みながらしかも必ず何かしら肴も用意していたので
ダイエットしていた体重がすっかり元に戻ってしまった。

●6月30日
ワールドカップの決勝トーナメントが終わり準々決勝が始まる間のお休み。それを知ってか知らずかかつてお世話になった代理店D社のHR氏から暑気払いのお誘いがあり。D社時代のシマで新橋は駅ビル地下の居酒屋「扇里」へ。HR氏はすでにD社を早期退職してアジアでの生活を目指している。昨今のD社のアジア関連の動きなど参考になる話を聞かせてもらった。お店自慢の熊本の馬刺しでスタミナをつけ、ニンニク臭をぷんぷんさせてサッカー好きのマスターのワールドカップ評をきくために銀座のBAR「FAL」へハシゴ。

●7月1日
年1回の恒例になったわが高校のOBのマスコミ業界従事者の会合に出席。会場は、以前は有楽町の外国人記者クラブの宴会場だったが昨年から日比谷の「松本楼」で行われている。「松本楼」は71年の沖縄返還闘争で炎上したが、その当日現場近くにいたのでその日のことはいまだによく覚えている。当日新聞社のカメラマンで取材していた先輩がいて昔話に花が咲いた。40年近く前の高校生だった自分を思い出し時間の流れになんだか不思議な気分だ。「松本楼」に関してはその後内幸町に勤めていたこともあってランチをよく食べたりなにかと思い出深いレストランだ。会は例年参加者が減っていたが今年は先輩たちに声を掛け合ってもらったり、アトラクションで先輩たちのオヤジバンド演奏などもあって30名を超える盛会となった。

●7月4日
準々決勝が終わり、再び準決勝まで2日間サッカーはお休み。昔からのサッカー仲間HT氏が中間総括しましょうということで新宿の居酒屋「かり屋」で落ち合う。HT氏は開幕直後仕事で渡米していたが、今回のワールドカップは長くサッカー不毛の地だったアメリカでも相当盛り上がっていて、スポーツバーでは色々な人種が応援でどこも盛況だったそうだ。新宿三丁目のBar「EORNA」へハシゴ。ここのマスターもサッカー好きで店内にはスカパー!が観れる大型液晶テレビが設置されている。昔は呑みながらサッカーをテレビで観戦できる店なんて本当に限られていたが隔世の感ありだ。

●7月6日
元KS社のKJ氏が夕方来社、この日は深夜に準決勝のウルグアイ×オランダ戦があるので8時終了厳守ということで日が高いうちから須田町の老舗蕎麦屋「神田まつや」で軽く一杯。人気店だけあって6時超えると相当に混みだしたので近所のやはり老舗の居酒屋「みますや」に移動。呑みだすと止まらなくなるKJ氏をけん制しながら8時きっかりで終了し帰宅。

●7月13日
ワールドカップも終了し放心の毎日だが、季節は夏。高校野球で母校が強豪と対戦というので結果が気になっていたが、この試合を新宿二丁目のBAR「T's Bar」のマスターが中野ケーブルテレビで観ていたよとメールを受けたので、その様子を聞くという口実で呑みに立ち寄る。

●7月14日
今回、やはり南アフリカ現地取材を見送ってしまったスポーツカメラマンのKG氏と、“やっぱり行けばよかったと悔しがる会”を四谷の中華料理「こうや」で敢行。共通の知人であるHT氏も加わりワールドカップ観戦評と次回のブラジル大会の話で盛り上がる。今回は高い、遠い、危険ということで見送ったわけだがやはり後悔先に立たずだ。4年後のブラジルは同様に高い、遠い、そこそこ危険だが絶対になにがあろうが行くことをみんなで確認する。KGさんそれまで現役続けてね。「こうや」の後はKG氏行きつけのBar「3Circle」へ延長戦。

●7月15日
アニメ、ゲーム系の出版社EB社のST氏、AS氏から電子出版時代のコンテンツを考える上での雑誌の現状について話を聞きたいということで新宿三丁目の居酒屋「かり屋」へ。デジタルに関しての話がどこまでできるか自信がなかったが、むしろアナログの雑誌の現場の話や昔話が聞きたいということで、そういうことならと昔の編集部の“悲惨な?”話をたっぷり。しかし紙をベースにした出版社が新しい電子出版で何ができるかと考えると業界的なくだらない因習とか権利関係でなかなかうまくいかないと予想せざるを得ない。

●7月16日
元KS社のKJ氏がワールドカップの反省会(何を反省する?)をしたいということで来社。神保町の路地裏中華料理「大興」で餃子にビールという夏の定番呑み。「明治屋2nd」にハシゴ。気温は夜になっても沸騰したまま、日本は完全に気候変動で亜熱帯圏になってしまったと実感する毎日だ。

2010年7月13日火曜日

スペインの勝利


より強いものが勝つ。
当たり前のことだが、ことサッカーにおいてはそんなに単純でもない。最強と謳われるチームが相手の戦術の前でよもやの敗戦を喫することは往々にしてある事だ。
しかしながら7月11日、ヨハネスブルグ、サッカーシティスタジアムで行われたスペインとオランダの決勝戦はより強いものが勝つというまっとうな理屈で、まっとうな結果となってあらわれた。

試合は90分で決着がつかず、延長戦に突入し、さらにその後半に折り返してやっとイニエスタの値千金のゴールでスペインが見事に初優勝を飾った。確かに激闘であったし、手に汗握る戦いでもあった。ロッベンのGKと1対1になった局面でカシージャスの神がかり的なセーブが無ければ勝負はオランダのものだったかもしれない。それでも終わってみれば2008年のヨーロッパチャンピオンのスペインがその持てる能力、あふれるインスピレーション、美しいまでのパスワークで順当にオランダを退けたと思わざるを得ない。

オランダDF陣は序盤からハードなボディコンタクトでスペインの攻撃陣を削ってきた。解説者はオランダの厳しいディフェンスでスペインのパスを封じ、オランダ優位で試合を進めていると耳障りのいい言葉を使っていたが、実際はイエローカードが10枚も乱れ飛ぶほどの“汚い”いいかえればなりふりかまわないプレーを繰り広げた。勝利への執念といえばそれまでだが、スペインの選手たちの緩急、長短、強弱おりまぜたテクニックに対抗するにはこの“汚い”戦術を選択する以外道がなかったとも言える。さすがに前の試合から1日分ハンデがあるだけに、スペインもより疲労していたことから試合は延長にもつれたが、水族館のタコの予言を待つまでも無くスペインの勝利は至極当然だった。

バルセロナはカタルーニャであってスペインではないと、1936年のスペイン内戦以来の国内民族事情もあって、過去スペイン代表としてのモチベーションが高まろうはずも無かった。、美しいサッカーをやりながらも実績を残すことは出来なかったし、世界最高のリーガエスパニョーラの栄光はこと代表には無縁だった。ところがユース年代から世界タイトルを取ってきた今回の代表チームの偉業は、バスクもカタルーニャもなかった。ひたすら完成された芸術を崇めるかのごとく“スペイン国民”は熱狂した。
考えてみればグローバリズムに席巻される現在の世界体制の中、ヨーロッパ自体が統合しなければ国家の存在が成り立たない現状からすると、いままでの民族主義地域主義は徐々に色あせざるを得ないのかもしれない。
マドリッドやバルセロナの街頭を埋め尽くす人々の歓喜する姿を観るにつけ、スペイン代表の今回の戴冠はそんな新たな時代へのシンボリックな勝利とも言えるだろう。
だとすれば、2010年の南アフリカで成し遂げた世界一へ向けたプレーは、スポーツの枠を超えあまりにも大きな勝利だったと称賛されてしかるべきだろう。

2010年7月11日日曜日

セミファイナル!美しく勝利せよ


ついに優勝国は4カ国に絞られた。
ドイツ、スペイン、オランダ、ウルグアイ。
ドイツは過去3回、ウルグアイは2回の優勝があり、スペイン、オランダはともに勝てば初めての優勝となる。
6月11日から1ヶ月かかって戦われてきたサッカーの祭典もついに終盤を迎えつつある。祭りのフィナーレを飾るあでやかな栄光を待ちわびながらも、すでに祭りが終わった後の寂寥感すら感じるようになってきた。この至福のときがいつまでも続くように念じながらも、あと残すところ3位決定戦を含め4試合のみ。
セミファイナルはドイツ×スペイン、オランダ×ウルグアイ。特に前者は夢のカードといってよいだろう。サッカーという共通文化を自らの母国の歴史や民族の誇りをかけて、いま、新たなる伝説が創造されようとしている。

7月6日
●オランダ3-2ウルグアイ
強力な得点力を誇るオランダと試合巧者のウルグアイ。ウルグアイ頼みの2トップの1角であるスアレスは準々決勝の激闘で母国を救うことになったハンドで1試合の出場停止、エースのフォルランがその重責を一身に背負う。オランダはロッベンの復帰がチームを活性化させトーナメントに入ってから圧倒的な強さを見せ付けてきた。大会前カイトやロッベンらの間にささやかれた不協和音はどこへやらチームも優勝という大目標の前に一丸となっている。両チームとも試合開始早々から激しくボールを奪い合い互角の展開が続いていたが、先制点はオランダ。前半18分に左サイドからファン・ブロンクホルストがゴール右角に目の覚めるようなミドルを突き刺した。いままでスナイデル、ロッベンの活躍の影で献身的にチームを支えてきた主将の大一番での見事な仕事だった。しかしウルグアイもこの強敵にひるむことなく果敢に攻める。何度もチャンスを作りむしろオランダよりチーム状態の良さを印象付けるような堂々とした戦いぶりである。41分に今度はおかえしとばかりディエゴ・フォルランが中央からミドルを放ちGKの頭上を破リ、ウルグアイは試合を振り出しに戻す。さらに前半終了間際の波状攻撃は相手をダウン寸前までにラッシュをかけるボクサーのようであったがオランダはゴングで救われた。スカパー解説のイビチャ・オシムも審判が笛をもう少しの間吹かなかったら点が入っていたと断言していたほどだ。後半も一進一退だったが25分スナイデルが左45度から狙ったシュートはオフサイドの位置の見方の足をかすめそのままゴールに吸い込まれていった。主審はこれをゴールと認めオランダは再び優位に立つ。浮き足立つウルグアイの体制が整う前にさらにロッベンが左からのクロスをヘッドで叩き込み追加点をもぎ取り、突き放すことに成功。ウルグアイは2点差になっても戦意は衰えずフォルランを中心に執拗にオランダゴールに迫る。オランダは守り抜くべく時間を使い刻々と過ぎていく。ロスタイムにマキシミリアーノ・ペレイラがついにオランダゴールを破るゴールを決めたが、ときすでに遅し検討届かず無情のタイムアップの笛が鳴った。オランダの強さはさることながらそれ以上にウルグアイの魂が感じられる激闘だった。



7月7日
●スペイン1-0ドイツ
強力な得点力でイングランド、アルゼンチンと強豪をねじ伏せてきたドイツが、いまひとつ調子の上がらないスペインにも圧倒してしまうのではないかという予測も、それがまったく見当違いであることを試合開始早々に見せつけられた。スペインの素晴らしい芸術的ともいえるパス回しで、ドイツはまったくボールが奪えないでいる。ゆっくりとチャンスを組み立てゴール前ではイニエスタ、ビジャ、シャビ、シャビ・アロンソ、ペドロらが変幻自在にドイツゴールを脅かす。特に怪我明けで本来のコンディションではないフェルナンド・トーレスの代役を務めるペドロはことごとくチャンスに絡む。74年のオランダ×ドイツ戦でオランダが見せたパス回しにも似てスペインはドイツを翻弄した。バルセロナに根付いたクライフの遺伝子が甦ったかのようにである。ただしなかなかドイツもスペインに簡単にはゴールを割らせないでいたが後半28分CKからDFのプジョルが打点の高いヘッドを突き刺しやっと1点をもぎ取った。しかしこの1点でスペインにとっては勝利には十分だった。ドイツは試合を通してトロホウスキのミドル、クロースのミドルと決定機は2回だけ。点差以上に明らかな質の差を感じさせる完敗を喫してしまった。
バルセロナを中心とするスペインの美しいまでのサッカーと、やはりミケルス、クライフがその土台を築いたオランダとの決勝。クライフの後継者たちによる戦いはどちらが勝っても初の戴冠となる。



7月10日
3位決定戦
●ドイツ3-2ウルグアイ
目標を失った同志の3位決定戦はその存在意義を疑問視するむきもあるが、90年のイタリア大会以降、なかなか見ごたえのある戦いが繰り広げられてきた。今回もドイツとウルグアイは世界3位の“栄光”をかけて追いつ追われつの激戦となった。歴代通産ゴール記録がかかるクローゼは怪我で欠いたが、ドイツはミュラーが得点王を狙う大会通算5点目を決め、またウルグアイのフォルランも見事なボレーでやはり通算5点目をあげた。ドイツは何とかウルグアイに競り勝ち有終の美を飾った。

そして翌11日。日本時間27時30分、ヨハネスブルグ、サッカーシティで世界一の栄光を目指す戦いが始まる。

一番面白いベスト4への激闘を制したのは?


ワールドカップで一番面白いといわれる準々決勝。過去幾たびも歴史に残る名勝負が繰り広げられ、自分自身も今までワールドカップの現地観戦は決まって準々決勝を中心に観て来た。今回も「アルゼンチン×ドイツ」「オランダ×ブラジル」はじめなかなかの好カードが揃い、世界最高峰のサッカーを観る至福の時間を十分に満喫できた。南米4、欧州3、アフリカ1の8チームのうち頂点に立つのはどの国か?予断を許さない戦いは最高潮を迎える。

7月2日
●オランダ2-1ブラジル
74年大会オランダ、84年大会ブラジル。この2国の対戦は過去激戦の末痛み分けてきた。スピードのオランダ、テクニックのブラジルと相場は決まっていたが、今回はお互い過去のイメージは払拭しブラジルの固いディフェンスラインにオランダのトップのスキルフルな攻撃がどこまで通用するかが試合の行方を決定するはずである。開始10分、フェリペ・メロのセンターからの長いスルーパスを抜群のタイミングで受けたロビーニョがいきなり先制してしまう。オランダの弱点であるDFラインの背後を見事に突いた鮮やかな得点だった。ブラジル強し!このままブラジルが試合巧者振りを発揮しゲームをものにするのだろうか、前半はまさにブラジルの思い通りの筋書きに進んでいるかに見えた。30分ロビーニョのドリブル突破からルイス・ファビアーノがカカーに絶妙のパスをつなぎ、カカーは狙い済ましてゴール角を狙うがGKの超美技で得点ならず、前半終了直前にもマイコンが70年のカルロス・アルベルトを思い出させる右サイドからの強烈なシュートを放つが惜しくもサイドネット。攻めっぱなしのブラジルだったがこの決定機を逃したことが後になって大きな意味を持つことになってしまう。後半に入ってすぐオランダはFKからの早いリスタートでスナイデルがブラジルゴール前に放り込むと、メロとGKセザールの連携ミスを誘いまさかのオウンゴールで同点となってしまう。これで生き返ったオランダは厚い攻撃を仕掛けるようになる。25分にCKからスナイデルがヘッドで叩き込みまたもセットプレーからの得点でついにゲームをひっくり返した。焦るブラジルはよくも悪しくもこの試合の主役となってしまったメロが相手を踏みつけ一発退場で数的にも不利になってしまう。流れはどんどんとオランダに傾き、結局このままブラジルは奈落に沈んでしまい王国はベスト8で姿を消すことになってしまった。西村雄一主審も冷静に試合をコントロールし、こちらも日本サッカー史上に残る活躍ぶりだったことも特筆する必要があるだろう。

●ウルグアイ1-1ガーナ(PK4-2)
フォルラン、スアレスの2トップが絶好調のウルグアイ、アフリカ唯一の8強入りで地元を味方につけたガーナ。タイプがまったく異なる実力伯仲の2カ国の興味深い対戦だったが、先手を取ったのはガーナ。若きムンタリが今大会でも一二を争う素晴らしい30mのロングシュートを右隅に決めた。ウルグアイもこれで追う展開になり気迫あふれるプレーでゴールに肉薄する。後半10分、今度はフォルランがFKからこれまたビューティフルなゴールを叩き込み追いつく。逆転を狙うウルグアイは何度となくガーナゴールを脅かすが何とかガーナも耐え抜き延長戦へ。延長でも決着がつかずこのままPK戦かと思われたロスタイム、ウルグアイゴール前の混戦から放ったアディアのシュートは飛び出したGK不在のゴールへ。とっさにゴールをカバーしていたスアレスがハンドでなんとかその得点を防いだが即座にPKが宣告され、これでガーナの劇的勝利かと思われたがさらにドラマは待っていた。キッカーのギャンはなんとこれをはずしてしまいタイムアップ、決着はPK戦に持ち込まれた。一発レッドでピッチから去っていたスアレスは皮肉にも一躍ヒーローになってしまう。
ドラマチックな試合は結局動揺するガーナがメンタルが左右するPK戦を制することが出来ず、ウルグアイの4強進出が決まった。筋書きのないドラマとはまさにこのことというようなスリリングな試合だった。

7月3日
●ドイツ4-0アルゼンチン
優勝3回のドイツと優勝2回のアルゼンチン。どちらも強力な得点能力で今大会ゴールを量産してきた。事実上の決勝戦という論調もあるほどここでどちらかが消えるのが惜しまれる。1点勝負だろうとの大方の予想だったが試合開始早々いきなりドイツがセットプレーからミュラーが先制点を挙げてしまう。ドイツは早いパス回しで今大会一番の試合運びでアルゼンチンに対するが、メッシ、テベスの個人技はさすがにそのドイツに対応を強いることになり、ドイツの運動量も徐々に衰え、アルゼンチンは後半ゲームを支配しだす。しかしながらピッチの神は不世出の天才・メッシに味方せず、23分にクローゼが間隙を縫ってゴールを決めてしまう。ワンチャンスをものにされ2点のビハインドを背負ったアルゼンチンは焦りの色を見せ始め、強引なメッシの突破にドイツはマークを固め、アルゼンチンは次第に網にはまっていく。追いつくどころか3点目はドイツのDFフリードリヒに決められ突き放され、終了間際にはクローゼに止めを刺されてしまう。4-0。ドイツの水族館のタコの「パウル」以外に誰も予測できなかった結果でアルゼンチンはいいところ無く独特のパフォーマンスで大会を盛り上げてきたマラドーナ監督とともに大会から消えていくことになった。


●スペイン1-0パラグアイ
優勝候補と目されたスペインもなかなか調子が上がらないまま勝ち進んできたがポルトガルを下し華麗なパスワークの復調の兆しも見える。日本を下したパラグアイは堅守で知られるが、やはり攻めるスペイン、守りながらカウンターを狙うパラグアイという試合展開になった。スペインは持ち前のパスで攻撃を組み立てるがゴールが遠い。逆に前半終了間際にパラグアイがバルデスのシュートでゴールを割ったかに見えたがオフサイドの判定、さらに後半13分カルドーソがPKの絶好のチャンスをはずしてしまう。絶体絶命のピンチを脱したスペインは今度はシャビ・アロンソがPKをはずしてしまい、どうしても勝ちきれない。攻めながらも苦しむスペインだったが後半38分にペドロのシュートがポストに嫌われるところをビジャが押し込み値千金の1点をもぎ取る。どうにかこうにか南米の難敵を下したスペインだが、次回はアルゼンチンを下し絶好調のドイツが相手、不安はぬぐい切れない準決勝進出である。

2010年7月10日土曜日

ラウンド16 レベルの高い好ゲームが展開


日本代表ベスト16入りの壮挙は今大会をより面白くさせたのは確かだが、ここまでフランス、イタリアの不調や南米勢の伸張、アウトサイダーと思われた新興国の健闘など、今回の南アフリカ大会はワールドカップの面白さを十二分に感じる大会となったのではないだろうか。グループリーグのスリリングな星取りも終わり、いよいよ一発勝負の決勝トーナメントに突入した。組み合わせの妙というか決勝のカードでも良いような優勝候補国がトーナメントの初戦からいきなり対戦したりもするのもうれしいような惜しいような気がするが、大会もいよいよ佳境、頂点に立つのはどの国か?強豪同士の生き残りをかけた激戦に手に汗握る日々が続く。

6月26日
●ウルグアイ2-1韓国
歴代最強と謳われる韓国は、南米の古豪に対して開始早々から自信に満ちた攻勢を仕掛ける。しかしながらA組を1位抜けしたウルグアイは強固なディフェンスとスアレス、フォルランのカウンターで反撃し一進一退の激しい攻防が展開する。先手を取ったのはウルグアイ。フォルランのクロスをスアレスが押し込み、自慢の2トップでゴールを奪う。しかし韓国もひるむことなくポゼッションを支配しサイドからアタックを仕掛ける。
後半、韓国のFKからイ・チョンヨンが頭で決めて同点。さらに勢いづいて一段と攻勢に出るがウルグアイの粘り強い守備にチャンスをことごとくつぶされる。そうこうしているうちにCKからスアレスが決めて再びリードを許してしまう。韓国は終了間際にパク・チソンの折り返しからイ・ドングのミドルでゴールを捕らえるがウルグアイの必死のクリアでこの絶好機を逸して万事休す。韓国はここ10年で対ウルグアイ戦5連敗。またしてもこの壁を越えることは出来なかった。しかしNHKの韓国びいきの解説にうんざり。なぜ同じアジアということだけで一方的な身びいきをしなければならないのか理解できない。

●ガーナ2-1アメリカ
アフリカ勢で唯一決勝トーナメントに進んだガーナは圧倒的な応援を受け開始早々積極的に攻勢に出て、ボアテングが立ち上がりに先制弾を決める。試合が落ち着くとアメリカも持ち前のスピードで反撃、たまりかねたガーナDFはPKを与えてしまい、ドノバンが冷静に決めて試合を振り出しに戻す。その後両チームの一進一退の攻防が続くが90分で決着がつかず延長戦へ。足が止まりかけたガーナに対しアメリカの勝ち越しは時間の問題と思っていたが、ガーナのエースギャンが驚異的な身体能力を生かしてアメリカDFの裏へ飛び込み決勝弾を叩き込む。アメリカも最後まで全力を振り絞って追撃するもアルジェリア戦の奇跡の再現はならず力尽きる。

6月27日
●ドイツ4-1イングランド
欧州を代表する強豪同士の好カードとなったが、イングランドはグループリーグではあまり調子が上がらなかった。その好不調の差が出たのか序盤にドイツがクローゼの先制弾、ポドルスキーの追加弾でイングランドを突き放すが、イングランドもすかさずCKからアプソンが合わせて追い上げる。さらにランパードの強烈なミドルがドイツのバーを叩きゴールを割ったものの主審はノーゴールの判定、66年の因縁の決勝戦の逆をいく疑惑のゴールで同点のチャンスを逃してしまう。後半に入り前がかりになるイングランドの隙を突いてミュラーが立て続けにカウンターで得点し、気がつけば3点差でドイツの完勝。最後まで調子の上がらなかったイングランドに対しドイツのスキの無い強さが光った。しかしあのイングランドの幻のゴールが認められていたら試合の行くへはどうなっていたか、つくづく不思議な巡り合わせである。









●アルゼンチン3-1メキシコ
優勝候補筆頭のアルゼンチンに、メキシコは豊富な運動量で果敢に対抗する、しかしながらメッシ、テベスを止めるために守備に人数をかけざるを得ないので、なかなかポゼッションを取れない。アルゼンチンはメッシのミドルをテベスがDF陣の裏でボールを受けて先制。あきらかにオフサイドだったが主審も線審も見落としやらずもがなの1点を与えてしまう。動揺するメキシコにアルゼンチンの強力な攻撃陣はかさにかかって攻め、相手のミスパスからイグアインが2点目をゲットして前半を終える。後半メキシコも果敢に攻めるもののテベスの見事なロングシュートで3点目を決められ試合はほぼ決定してしまう。あきらめないメキシコはエルナンデスの得点で追いすがるが反撃もそこまで。エルナンデス、ドスサントスといったメキシコの若き才能の健闘は光ったものの、アルゼンチンの破壊力の前に粉砕されてしまった感じだ。イングランド×ドイツ戦に続きまたしても誤審が飛び出し試合の趣を壊してしまい、今後の判定基準に大きな論議を呼ぶことは間違いない。

6月28日
●オランダ2-1スロバキア
優勝候補のオランダが、分離独立後初出場で意気上がるスロバキアと対するが、やはり地力の差はいかんともしがたい。前の試合から復帰したロッベンがこの試合でも圧倒的な存在感で堅守のスロバキアDFを切り裂く。先制もロッベンがカウンターから持ち込んで強引にシュートしたもの。後半スロバキアも反撃に出るがFKからの素早いリスタートからスナイデルに追加点を決められてしまう。力をセーブしたオランダは終了間際PKで1点を返されるが危なげなくスロバキアの挑戦を退けた。

●ブラジル3-0チリ
南米同士の戦いとなったが、チリは優勝候補のブラジルに対し守備的にならずに積極的に攻撃を仕掛けていく。しかしCKからフアンに決められ先制を許すとブラジルが徐々にゲームを支配しだす。カカーとファビアーノの華麗なパス回しから追加点を取られると完全なブラジルペースに。後半はロビーニョが3点目を決め試合を決定つけると、あとは余裕のパス回しで無理をせず手堅く勝利する。ブラジルの優勝に向けたチーム力は万全と印象付けられた試合だった。

6月29日
●パラグアイ0-0(PK戦5-3)日本
史上初のベスト8進出の夢をかけ、日本は国民の期待を背負って未知の領域への戦いに挑んだ。守備的な日本はパラグアイにポゼッションを与えるものの決定機を与えず反撃のチャンスをうかがう。日本のカウンター攻撃にパラグアイも南米一の堅い守備で跳ね返し90分間ではジャブの応酬にとどまり、延長勝負となった。日本は今大会初の中村憲剛の投入で局面の打開を試みるが決定機はなかなか作れない。逆にパラグアイの反撃であわやのピンチを迎えてしまうが何とかしのぎきり、ついに大会初のPK戦に。3番手の駒野がボールをバーに当ててしまい、これで日本の夢はついえてしまった。日本の健闘は讃えられるものの試合はレベルの低さを露呈してしまい、トップのレベル差をつめるにはまだまだ時間がかかることを思い知らされる結果だったといえよう。

●スペイン1-0ポルトガル
イベリア半島対決。なかなか調子の上がらなかったスペインだったが持ち前のパスワークが復活、C・ロナウドをはじめとしたポルトガルのスピードと見ごたえのある攻防が繰り広げられる。それでもやはりスペインの全員の総合力はポルトガルに勝り、攻めあぐねるものの試合は完全にスペインのペースに。後半ビジャの得点が決まるとポルトガルは点をとりに出ざるを得なくなる。そのスペースにシャビ、イ二エスタ、セルヒオ・ラモスらが次々とパスを通してチャンスを作っていく。結局1-0のままスペインが8強入りを果たすが点差以上にゲームはスペインのものだった。あとはフェルナンド・トーレスの決定力さえ復調すればやはり優勝に限りなく近い位置にいることは間違いないようだ。

2010年7月1日木曜日

冒険の終わりと始まり


2010年の南アフリカでの日本の冒険は終わった。

岡田監督が当初目標に掲げたベスト4には手が届かなかったものの、初の海外開催のワールドカップでの決勝トーナメント進出という金字塔は打ち立てることができた。大会前のAマッチ4連敗という絶望感も終わってみれば歴史的な2勝という結果で、日本国民からも落胆しつつも惜しみない賞賛の拍手が送られた。
パラグアイとのトーナメント1回戦での戦いも、もう少しというところで運がつきたかのように勝利が逃げて行ってしまった。しかしながらよくあるメディアのエモ―ショナルな“感動をありがとう”的な煽りはもうあまり意味がない、サッカーはこれでおしまいになるわけではなく、次のブラジル大会への準備が今からスタートを切ったということを改めて確認しなければならない。

中村俊輔のように“もうオレはいいよ”とこの舞台から去る者もいるわけだが、本田圭佑のように“全然満足していない、自分が日本人かパラグアイ人じゃなければこんな試合見ない”とさらなるレベルアップを目指す世代がこれからの代表を形づくっていくことになる。

本田の言うことは確かで国民的には熱狂し夢中になったパラグアイ戦もおそらくやっているサッカーの質という観点では凡庸な試合と他国メディアに評されても仕方がない内容だった。ならば、ブラジル大会に向けて今回何が欠けていたのか、戦術的にも、選手の育成にも、協会のバックアップ体制にも、メディアの報道内容ももう一度分析し、再構築していくことが必要だろう。
予期せぬ好結果を導き出した岡田監督の手腕に対して手のひらを返したような絶賛や批判論を繰り返してきたことへの謝罪も、もうあまり意味がない。次の監督をどうして、おそらくは代表からいなくなっていく世代の選手の後にどんな人材を起用し、経験を積ませていくのか早急にアクションを開始することこそ、今回の結果を次につなげる重要な鍵になるはずだ。

本大会ベスト16を越えることを考える前に、アジアを勝ち抜く困難な戦いがある。しかも2年後にははやくもその長きにわたるチャレンジが始まることを考えると時間がそれほど多くあるわけではないのだ。

感傷に浸るのは1日だけでいい。
Jリーグで、各国のクラブで、協会、スタッフ、選手たち。そして何より彼らを支えるわれわれの戦いもまた始まる。