2011年10月28日金曜日
チベットの空の青さが哀しいまでに美しい
仕事が山積みの中、なんとか時間を作りながら観に行っている今年の東京国際映画祭だが、3本目となる中国映画のコンペティション作品『転山KORA』を鑑賞。
若くして亡くなった兄の夢が自転車によるチベット走破であったことを知った台湾人の青年が、兄の遺志を継ぐことで兄に対する思慕と彼の死に向かい合おうとチベットへと赴く。
平均標高3000~5000mの息をするだけで苦しい高地の過酷なコースへ命の危険を賭した挑戦で、ついに目的地のラサまで辿りつくまでを描く。
体力の限界に呻吟し、次々に立ちふさがる自然の猛威に何度も打ちのめされるものの、道中知り合った同じ自転車でのチベット行きを目指す雲南省の年長の男との友情や、現地のチベットの人々との交流を通して、いつしか兄の死を受け入れ成長していくロード・ムービー&グローイングストーリーである。
話自体はそこそこ面白い展開を見せるし役者もなかなか熱演していて好感は持てるのだが、主人公の台湾人の青年が、なんの束縛も無く政情不安のチベットにはいりこんでいることは果たしてあり得るのだろうか?また過酷な環境といいながらも、道路が舗装されていたり、公衆電話で国際電話がかけられたり、文明はこの秘境にも当たり前のように入り込んでいることに驚かされる。なんだかそこに漢民族による文化侵略を感じてしまうのも、あまりにも色眼鏡で見ているということになるのだろうか。
あえて台湾人を主人公に選ぶところも、プロパガンダ臭く感じてしまったりもするし、まあ中台合作といえど、中共によるチベットに対する経済文化支配への問題意識など盛り込める訳も無く、そういう社会背景は全くネグられてしまっているのは仕方のないところなのかもしれないが…。
ただ、映像から伝わってくるチベットのヒマラヤ山系の空の青さ、清澄な空気感を味わうだけでも観る価値があることは確か。
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