2014年7月18日金曜日

ちょっとビターな台湾版「ジュールとジム」


ワールドカップの昼夜逆転の日々も一段落、先日、ひさびさに映画館に出向いて台湾映画『GF★BF』(2012年 原題=女朋友、男朋友 監督/楊雅 を鑑賞。
1985年、いまだ戒厳令下にあった台湾・高雄の男子高校生2人と女子高校生の、約25年の愛情の交錯を描く、ちょっとビターな物語である。
いわば『突然炎のごとく』、『冒険者たち』のような男二人と女一人の典型的なプロットなのだが、台湾の映画でよく取り上げられる同性愛がこの3人の関係をより複雑なものとしている。
かつて台湾に駐在時によく耳にしたのは“台湾は兵役があるので”という理由から社会的にホモセクシャルな関係が確かに多いように感じたが、特に映画や、文学においてもよく取り上げられる。
この映画の主演の一人張孝全(ジョセフ・チェン)は何年か前の『花蓮の夏』でも、男同士の性的シーンを演じていたが、今回もこの経験を?買われたのか、親友役の鳳小岳(リディアン・ボーン)相手に繊細な恋心と秘めたる激情を巧く演じていた。
よって、正確には三角関係とは言えないものの二人のミューズ的存在であるヒロインの桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が男勝りの性格であることが、三人の友情(愛情)の均衡を保つファクターになっている。

この映画のもう一つのポイントは台湾現代史の「時代性」である。物語の始まる85年という戒厳令末期(87年に解除)の蒋経国強権政治にほころびが見え始めた時代、李登輝政権による民主化への道に伴う90年の学生運動(野百合運動)などが、当時の若者たちが激動の台湾でどう生きたのかという歴史体験を再現しているのだが、学生運動後の挫折、社会での成功のためにそれぞれが価値観が変わっていく様子などもほろ苦く心を打つ。
85年の高校時代に夜市で「民主」や「フォルモサ」というような禁署扱いの反体制派の雑誌をこっそり売って小遣い稼ぎをしたり、森進一の「港町ブルース」を原曲とした「誰来愛我」の劇中での使い方だったり、高校生たちの部室に松田聖子のポスターが貼ってあったり、日本語をはやり言葉で使ったり日本との強い影響も細部まで忠実に描いて時代の雰囲気を作っているのも感心させられる。

個人的には『藍色夏恋』(2002年)の鮮烈なデビューが記憶に刻まれている桂綸鎂の演技派女優としての成長に目を奪われた。実際もう30歳を迎えるそうで少女の面影を残しつつも成熟した大人の色香を感じさせる。この作品で2012年の金馬奨最優秀女優賞を獲ったのもうなづける。また監督の楊雅喆(ヤン・ヤ―チェ)は『藍色夏恋』の助監督だったそうで少女のころからの彼女との長い付き合いゆえ、その魅力を巧く引き出すことができたのだろう。今後彼女の作品を追っかける楽しみが俄然広がった

 



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