ジェレミー・アイアンズ主演、ビレ・アウグスト監督『リスボンに誘われて』(2012年ドイツ/スイス/ポルトガル)の試写を六本木のアスミックエース試写室で鑑賞した。まさにタイトルに誘われて、観たかった作品である。
原作はスイスの作家パスカル・メルシエの「リスボンへの夜行列車」(早川書房刊)で、世界31カ国で翻訳されたベストセラーということだ。
物語はスイス・ベルンの初老の高校教師ライムントが自殺を図ろうとしていた女性を救うことから、100冊限定で出版された「言葉の金細工師」と題された本と遭遇。そのページをめくるや一言一句に魅せられてしまい、その足ですべての仕事を投げうって列車に飛び乗り、本の物語の舞台となっているポルトガルへ作者にまつわる人々の足跡をたどる旅に出る。
そこには70年代ポルトガルのサラザール独裁体制を打倒したいわゆるカーネーション革命前夜の緊迫した時代を舞台に若者たちの切ない青春の傷跡が浮かび上がってくる――。
“自分が選ばなかった人生”に思い...をはせるようになる、われわれの世代にとってはちょっとセンチな気分にさせる内容。構成上ご都合主義的な展開もちょっと気にはなったが、個人的には2004年に行って魅せられた場所リスボンが舞台というだけでもう大満足。バイロ・アルトの石畳の坂道とチンチンと音を立てて走る路面電車、海のようなテージョ川の陽光、アルファマの路地に立ちこめる鰯を焼く煙、ナザレの海岸と箱庭のような白き街並み、映画を見ながら色々と思い出してしまった。
登場人物たちの青年時代を演じるジャック・ヒューストン、メラニー・ロラン、アウグスト・ディールという若手役者陣もさることながら、爺さん婆さんたちが素晴らしい。主演のジェレミー・アイアンズ以外にも彼に心寄せる中年眼科医マルティナ・ゲデックはじめ、トム・コートネイ、クリストファー・リー、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、シャーロット・ランプリングというシニアの欧州オールスター出演は見ごたえ満点。
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