2013年5月7日火曜日

40~50年代初頭のLAは魅惑的だが

GW最終日は地元のシネコンに『LAギャングストーリー』(ルーベン・フライシャー監督)を観にいく。40~50年代のロスの闇社会を仕切っていたミッキー・コーエンに対して、ロス市警が秘密裏に組織した超法規的な手段を辞さない特別チームが死闘を繰り広げるクライムムービーである。

ミッキー・コーエンはハリウッドのおひざもとのヤクザもんだっただけに、よく映画や小説に登場する。実際にラスベガスの顔役だったベンジャミン“バグジー”シーゲルの弟分だったし、手下のジョニー・ストンパナートが人気女優のラナ・ターナーの愛人で、ジョニーはラナの娘に殺されるという大スキャンダルを起こしたりで、ド派手でセレブのコーエンはこの時代の裏社会を代表する存在として、実際の評価以上に悪のスーパーキャラとして取り上げられることが多いのである。この映画ではショーン・ペンが悪虐非道のモンスターのようなキレキャラを演じ、『アンタッチャブル』でカポネを演じたデ・ニーロ並みのアプローチで熱演している。

さまざまな組織犯罪で集めた金で、判事や警察官まで買収してしまうミッキー・コーエンの組織をつぶすには、半端なことでは勤まらない。ということで腕っこきの捜査官が選ばれ秘密裏にチームを組んで、時にはギャングのお株を奪う違法な手段で彼らを追い詰めていく。
実話を元にとしているものの、そこは娯楽作品だけにアクションまたアクションのどんぱちシーンが展開する。

それはそれで、黒澤の『七人の侍』やスタージェスの『荒野の七人』的な正義のために、組織からはみ出したものたちが、巨悪と対決するというプロットは面白く見れるし、ライアン・ゴスリングのばっちりソフト帽やスーツで決めたファッションは格好良いし、なによりも40年代、50年代というノスタルジックな時代の雰囲気の再現はたまらない魅力を感じる。
ただ、あまりにも単純明快な善悪の激突で、時代のバックグラウンドにひそむ社会問題や、登場人物たちのひきずっているものがまったく見えてこないのだ。よってドラマの深みの無さはいかんともしがたい。せっかく捜査官たちは戦争帰りという設定なのに、その体験を自らに内包する苦悩のようなものをもっと盛り込めばよかったのにと思う。

久々に大掛かりで大物スターも起用していて期待度が高かっただけに、ちょっとがっかり。あらためて『仁義なき戦い』など故笠原和夫氏の手がけた人間ドラマとしてのアウトロー映画のレベルの高さを再認識したような次第。

まあ、映画は楽しけりゃそれはそれでいいんだけどね。





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