2009年3月11日水曜日

可愛らしい戦争って?


最近ハマってしまったコミックス、西島大介著『ディエンビエンフー』(小学館)全5巻を大人買いしてしまった。
これが本当に凄い!
ベトナム戦争で戦場に派遣された日系米人のカメラマンとベトナムのゲリラ戦を戦う謎の少女兵士との切ない恋を主題に、グリーンベレーや少数民族のチャム族ゲリラと解放戦線の血塗られた戦いを描いたものなのだが、その最大の特徴といえば絵が何とも可愛らしくゲームキャラのような人物たちが、文字通りゲームのように縦横無尽に飛び跳ねながら戦いあうのである。

表現的にはまったくもって荒唐無稽でシュール、宣伝帯いわく“世界で一番可愛らしいベトナム戦争”ということなのだが、しかしながら絵の可愛さに反比例するように内容はめちゃめちゃえぐい。戦闘で手足はもげ、内臓は飛び散る。女たちは犯され、兵士たちは麻薬におぼれる。そんなベトナム戦争の実相を大真面目に徹底して“可愛く”表現していくのである。
コミックとはいえ歴史的にもベトナム史を古代中国からの独立にさかのぼり、抗仏戦争、対米戦争の政治的背景までをきちんとふまえており、さらには各巻末にまとめられているコラム「アオザイ通信」も筆者の取材メモやエピソードが盛り込まれなかなか読み応えがある。

ともすれば目を背けたくなるような戦争の悲劇を絵の可愛さで中和させていることで、かえってその無意味さやむなしさが読後にじわじわと伝わってくるような手法には心底感心させられる。日本のコミック文化のレベルの高さを改めて思い知らされた気分だ。

2 件のコメント:

ask さんのコメント...

K川版とS学館版があって、前者は1巻で途絶、後者は刊行中、なのですね。テキトーに古本市場も活性化させつつ注文してみました(途中まで)。凹村戦争も。

読む前に感想を言ってしまうと、村上春樹訳ティム・オブライエンのマンガver.なのでしょうか。サイバラの東南アジア紀行にも通じるか。

よく知りませんが"パンツじゃないもん少女航空戦隊"(『ストライクウィッチーズ』)とか『最終兵器彼女』とか、萌え+兵器(or戦記)という"かわいい戦争"はあると思いますが、過去の実戦に対峙してるのはちょっと興味湧きますね。amazonレビューなど見てるとこのひとのキャラは「萌え」とは違うようですが。(わしらには分かりません)

秋山光次 さんのコメント...

萌えというにはちょっと遠いというか、もっと幼いキャラですかね。村上隆をもっと稚拙にしたというか…。

実戦に対峙していることは確かなんですが、
可愛らしさで中和した戦争をどう評価するかは意見が分かれるところだと思いますけどね。ただ言えるのは僕が暮らしたことがあるシンガポールみたいな無菌国家では発禁になること間違いなしですw