芸術の秋ということで最近見た2本の映画が『ザ・テノール 真実の物語』と『至高のエトワール~パリ・オペラ座に生きて』。
『ザ・テノール』は世界的な韓国人テノール歌手べー・チェチョルが、がんで声を失ってしまい、日本人プロデューサーの奔走で日本人医師の執刀による声帯回復手術で奇跡の復活を遂げる実話をもとにしたドラマ。主演はユ・ジテと伊勢谷友介。映画自体の出来云々よりは、この時期の日韓の美しき友情物語という政治的な思惑をカンぐったりも出来たのだが、映画内で使われるべー・チェチョルのテノールの力強さは確かに「神」レベル。下手なお涙映画より実際の彼のオペラ公演を観に行きたくなってしまった。
『至高のエトワール』は長年パリ・オペラ座のエトワール(宝塚で言うトップ?)を務めてきたアニエス・ルテステュの引退までの2年間を追ったドキュメンタリー。アデュー公演の「椿姫」、はじめ「白鳥の湖」「天井桟敷の人々」「ドン・キホーテ」「放蕩息子」などの演目に加え、コンテンポラリーの舞踊まで、優美で流れるがごとき彼女の素晴らしい舞台の映像が満載。バレエやダンスにそれほどの知識を持ち合わせていなくてもため息が出るような至高の美しさに嘆息させられた。ドキュメンタリーゆえに映像的にはリアリティにより重きを置いたフィルム撮影でいまいち華やかさに欠けるのだが、舞台の記録映像も記録として撮られているのでこれも仕方がないのだろう。こちらも現役時代のオペラ座の舞台を観たかったなあと思ってしまった。実際、過去何度かパリに行った時に行こうと思えばそのチャンスは十分にあったわけだが、まあ映画で観たからこそ彼女の存在の大きさを始めて認識したので、当時はその素晴らしさを知る由もなかったのだが。
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