2011年9月19日月曜日

国際派スターを揃えたが


戦時下の上海謀略ものということでハリウッドメイド(正確にいえば米・日・中合作)の『シャンハイ』を鑑賞。監督はスウェーデン人のミカエル・ハフストローム。出演陣はジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、菊池稟子と当時の上海情勢そのままに国際的ではある。
豪華なキャストの合作映画というと大体が期待外れに終わるものだが、たまたま読んでいた本が「美貌のスパイ 鄭蘋茹」(光人社刊)という当時の上海を舞台にした話だったので、頭の中がすっかり1938年ごろの上海モードだったこともあって休日を利用して地元のシネコンに出向いたというわけである。

題材自体は確かにこんなに映画向きの時代はないし、魔都と呼ばれ頽廃とエキゾチズムのオールド上海は想像力をかきたてるに事欠かない。
ストーリーはアメリカの諜報員が殺害され、友人でもあった後任のジョン・キューザックがその真相を調べるため裏社会のボスであるチョウ・ユンファ、その妻コン・リーに接触するが、渡辺謙の日本軍大佐が殺害された工作員の愛人だった菊池稟子の居所を必死に捜索していることから、その陰に大きな軍事機密が絡んでいる事をつきとめるといったところだが、もちろんキューザックとコン・リーのラブ・ロマンスがあり、渡辺謙と菊池稟子もかつて何やらわけありだったというサイドストーリーも盛り込んである。

それなりに楽しくは観れたが、気になるのはユンファの組織が三合会のボスという設定。上海は青幇、紅幇の牙城で興中会の流れをくむ三合会は香港がフランチャイズ。藍衣社やCC団といった重慶政府側に立っていた上海裏社会は青幇が主流だったはず。日本軍に協力しているということで親日派の青幇・張嘯林がモデルとかなのか?。まあ広義に「幇」の総称で使ったということなのだろうが。ともあれ細かい突っ込みどころは多いのだが、なんだかサスペンスの中味と人間関係が表層的で、キューザックとコン・リーの絡みもあまりラブロマンスという香りがしないし、ましてや渡辺謙と菊池稟子の関係も恋愛関係にあった、もしくはかつては夫婦だったということを想起させるものの今ひとつよくわからない。映画としては冗長なものになってしまった感はぬぐえない。

またジョン・キューザックもなんだか父っちゃん坊やみたいで存在感が薄くロマンス向きではない。チョウ・ユンファも裏社会のボスっぽい凄身に欠けて、日本軍に利用される人の好いオヤジてな感じでちょっと可哀そうだ。唯一、軍人づいている渡辺謙の軍装はさすがキマッテいた。
『カサブランカ』ではないが、こういう題材で主役を張れる役者はなかなかいなくなってしまったというのが実感ではある。

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