2011年9月23日金曜日

旅は青春を形づくる


最近、一時の悲惨な締め切り地獄からはようやく脱し、次回の入稿までのほんのわずかな間だが時間が空くようになってきた。せっかく送ってもらっているマスコミ試写状もなるべく行くようにしなければと思い、内容に興味がある無しに関わらず観に行くように心がけているので、ここのところ映画を観に行く回数が増えた。
昨日は、映画評論家のED氏が自ら起こしている配給会社の作品『僕たちのバイシクル・ロード』というドキュメンタリー映画を鑑賞。
大学を出たばかりの英国の青年2人が(いとこ同士)、決められた人生を決められたように生きることに疑問を持ち、とにかく世界を見てやろうと自転車による大陸横断旅行に挑戦する。結果、彼らの旅は900日におよび南極含む7大陸を走破する。映画は彼ら自身の手によってハンディカメラで記録された映像を編集したものだが、当然旅は難行苦行が待ち受けていて、中国の悪路や山間部、ラオスからシンガポールに抜けるあたりが最悪の事態に次々に直面するのだが、この2人のポジティブな心持が(というよりあまり深く考えていない軽薄さを感じてしまうのだが)、襲いかかる危機的状況をことごとく乗り越えてしまうのである。
世界7大陸というけど、途中列車に乗ったり、船に乗ったりで、意外と拍子抜けしてしまうのだが、それでもやれって言われても普通の人ならやれないくらいの旅の内容ではある。

自分が若いころも小田実の『何でも見てやろう』とか五木寛之『青年は荒野をめざす』とかに夢中になったもので、いつかは海外へ冒険の旅に出たいものだと世界地図を眺めながらよく夢想した。ランボーが書いた通り“旅は青春を形づくる”というように世界を旅することは若者の特権であると思う。実際、かつては世界中どこに行っても日本の青年がバックパックを背負って放浪していた気がする。
この映画の若者たちも全然肩ひじ張らないところが今風なのだろうが、自分たちの生を確認すべく時間を旅に費やすのである。その行為自体はもう若くなくなってしまった自分に憐憫をかんじつつ、共感せざるを得ない。

ところが最近の日本の若者に照らし合わせてみれば、海外に出てつぶさに何でも見てやろうなんて連中は少なくなったとよく言われる。確かに変に小利口になったというか、こういうバカげた挑戦に熱くなってしまうような連中はごく少数になったのかもしれない。小さな会社の小品ゆえ、かかる小屋もロードショーとはいえ東京都写真美術館ホールと銀座シネパトスというから、とても大勢の人の目に触れるような作品ではないかもしれないが、世界的にすっかり目立たなくなってしまった「日本の若者」には是非少しでも多く観てもらいたいと思うのだが。

2011年9月20日火曜日

週間呑みアルキスト8.29~9.18


●8月30日
KJ氏来社。AM誌の入稿作業があるためあまり遅くならないという条件で、近所の蕎麦屋『侘助』で軽く一杯。話題は今週から始まるなでしこジャパンのロンドン五輪予選。これだけのブームになるのなら臨時増刊号をどこかの雑誌で作れなかったかと、KJ氏はさかんに悔やむが、どの雑誌でもこれだけのブームになるなんて予想すら出来なかったわけで、機動力のある新聞社系かサッカー専門誌以外は実際難しいはずである。しかも通常から彼女たちを地道に取材し続けてきたジャーナリストたち以外のにわか編集者が作ったとしてもとても良いものは出来まい。せいぜいこの週はテレビでの応援に徹するべきだろう。

●9月2日
お台場の局での会議の後、SM嬢と新橋の『ビーフン東』で食事。この日はザックジャパンのW杯予選北朝鮮との初戦があるため時間を気にしつつ早めに切り上げ、事務所に戻ってテレビ観戦を決め込む。なかなか点が取れずにいらだっていたがロスタイムでの吉田麻也の一発でからくも勝ち点3をもぎ取る。さっそく『明治屋2nd』にて祝杯。

●9月5日
事務所でなでしこジャパンのオーストラリア戦を見ていたら編集者のKN氏から呑みのお誘い。試合終了まで見届けた後、新宿三丁目の居酒屋『かり屋』で落ち合う。KN氏は近々、中国東北部旧満州を旅して回るとか。満州は自分としてもいつかは行きたいと思っていた地。なんだか先を越されたようで悔しいやらうらやましいやら。

●9月7日
D印刷のF部長、H氏の接待で、水道橋の隠れ家的洋食堂の『アンチヘブリンガン』でT出版O社長を交えて会食。D印刷のお二人はデジタルコンテンツ担当で電子出版の実行部門。アイデアだしという意味の強い食事開だったがなかなか有意義に意見交換が出来たと思う。これからの出版を考えれば当方のようなアナログ男でもうかうかしていられない。

●9月8日
なでしこジャパンの対北朝鮮戦の大一番を事務所でTV観戦した後、飯田橋の居酒屋『無花果』で東北転勤になるかつての仕事仲間だったTM銀行KT君を励ます会へ。以前勤務していた出版社では新規事業の立ち上げ部門に何人か銀行から若手行員が出向していて、その縁が今も続いているのだ。KT君も東北の復興のための中小企業への融資業務のためにかの地に向かうそうである。どうか融資のハードルを上げずに東北のために身を粉にして働いてきて欲しいと心から願う。

●9月9日
世界陸上大邱大会から帰国したスポーツカメラマンKG氏の慰労会で四谷三栄町の『徒歩徒歩亭』へ。四谷の名店『こうや』の系列だけに料理のほうの味は確か。2次会はいつものコースで四谷一丁目の『3Circle』で〆の一杯。

●9月10日
ラグビーシーズン開幕。母校の応援で久々の秩父宮観戦。この日はニュージーランドで開催中のW杯で日本の初戦となるフランス戦が行われるので、秩父宮のスタンドは急遽パブリックビューイングの会場へと鞍替えしファンにとってはうれしいダブルヘッダー。試合終了後事務所に立ち寄ると『明治屋2nd』のマスターご夫婦が店内掃除をやっていたので挨拶を交わすと夕食に誘われ『上海美食 酔仙飯店』で食事会。

●9月15日
帰り際『明治屋2nd』に立ち寄って呑んでいると、仕事が一段落したと向かいのデザイン事務所のTake氏がふらりと現れる。しばらくするとまたまた近所のデザイン事務所のRKさんも久しぶりで姿を見せたので同席(といっても立ち飲みだが)することに。話はついつい出版業界の不景気の話題へとなるのだが、それでも楽しそうなお二人を見ていて、こちらももう少し頑張らねばと気を入れなおす。

●9月16日
この日も帰り際新宿三丁目で下車して『T's Bar』へ。一杯飲んで帰るつもりだったがカウンターで隣り合わせた常連さんの女性と話が弾んでしまい気がつけば深夜。入稿の合間の1週間だったが来月は再び怒涛のように忙しい日々が予想されつかの間の息抜きではある。

2011年9月19日月曜日

国際派スターを揃えたが


戦時下の上海謀略ものということでハリウッドメイド(正確にいえば米・日・中合作)の『シャンハイ』を鑑賞。監督はスウェーデン人のミカエル・ハフストローム。出演陣はジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、菊池稟子と当時の上海情勢そのままに国際的ではある。
豪華なキャストの合作映画というと大体が期待外れに終わるものだが、たまたま読んでいた本が「美貌のスパイ 鄭蘋茹」(光人社刊)という当時の上海を舞台にした話だったので、頭の中がすっかり1938年ごろの上海モードだったこともあって休日を利用して地元のシネコンに出向いたというわけである。

題材自体は確かにこんなに映画向きの時代はないし、魔都と呼ばれ頽廃とエキゾチズムのオールド上海は想像力をかきたてるに事欠かない。
ストーリーはアメリカの諜報員が殺害され、友人でもあった後任のジョン・キューザックがその真相を調べるため裏社会のボスであるチョウ・ユンファ、その妻コン・リーに接触するが、渡辺謙の日本軍大佐が殺害された工作員の愛人だった菊池稟子の居所を必死に捜索していることから、その陰に大きな軍事機密が絡んでいる事をつきとめるといったところだが、もちろんキューザックとコン・リーのラブ・ロマンスがあり、渡辺謙と菊池稟子もかつて何やらわけありだったというサイドストーリーも盛り込んである。

それなりに楽しくは観れたが、気になるのはユンファの組織が三合会のボスという設定。上海は青幇、紅幇の牙城で興中会の流れをくむ三合会は香港がフランチャイズ。藍衣社やCC団といった重慶政府側に立っていた上海裏社会は青幇が主流だったはず。日本軍に協力しているということで親日派の青幇・張嘯林がモデルとかなのか?。まあ広義に「幇」の総称で使ったということなのだろうが。ともあれ細かい突っ込みどころは多いのだが、なんだかサスペンスの中味と人間関係が表層的で、キューザックとコン・リーの絡みもあまりラブロマンスという香りがしないし、ましてや渡辺謙と菊池稟子の関係も恋愛関係にあった、もしくはかつては夫婦だったということを想起させるものの今ひとつよくわからない。映画としては冗長なものになってしまった感はぬぐえない。

またジョン・キューザックもなんだか父っちゃん坊やみたいで存在感が薄くロマンス向きではない。チョウ・ユンファも裏社会のボスっぽい凄身に欠けて、日本軍に利用される人の好いオヤジてな感じでちょっと可哀そうだ。唯一、軍人づいている渡辺謙の軍装はさすがキマッテいた。
『カサブランカ』ではないが、こういう題材で主役を張れる役者はなかなかいなくなってしまったというのが実感ではある。

2011年9月15日木曜日

やがて来たる者とは?


第二次大戦下の1944年。北イタリアの山村でナチによる住民大量虐殺事件“マルザボッドの虐殺”を描いたイタリア映画『やがて来たる者へ』(ジョルジョ・ディリッティ監督)を試写にて観賞。

イタリア国内では昨年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリアのアカデミー賞)16部門ノミネートという高い評価を得た作品だそうだ。
イタリア降伏後、かつての同盟国ドイツは征服者へと立場を変え、これに対抗するパルチザンとの戦いが恒常化する中で、住民の支援の中で山中に潜みゲリラ戦を展開する相手を根絶やしにするため、ナチは無差別に女性や子供、老人たちを含む一般農民を殺戮する。映画はこの史実をある一家にフォーカスを当て、奇跡的に生き延びた少女の目を通して表現していく。
このように設定は準備されているが、つまるところドイツ軍が進駐、パルチザンが襲撃、ドイツ軍の報復は住民皆殺しへ向かう。ストーリーは言うなればその過程を追うだけのことである。

人民の海に潜む対ゲリラ戦で疲弊すると、必ず起こるのがこの手のジェノサイトである。日中戦争やベトナム戦争しかり、最近のアフガンやユーゴ、イラクでもこの図式は変わらない。戦争が起き、民衆のレジスタンスが始まると一般市民が往々にして犠牲になってしまう。こうした悲劇は現在に至るまで世界のどこかで繰り返し起きてきた。結局はこの映画の訴えるところも、戦争における人間の愚かなる行為、国家や思想の枠組みの中で敵対するものにはいくらでも残虐になれる、淡々とその事実だけを訴えているかのようだ。ラストは幼子の弟と共に生き延びた少女の哀切な歌声でフェードアウトする。標題の“やがて来たる者”は果たして何を指すのかこの歌声と共に色々な解釈を示唆するのである。

ストーリー性よりもドキュメンタリータッチで史実を掘り起こす。戦後イタリア映画の記念碑的作品であったロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』から60年。映画による戦争犯罪告発は世界の紛争地域、ナショナリズム、民族、宗教と益々複雑化する今日的状況が一向に歯止めがかからない状況を鑑みれば、こうした作品は作られ続けていくのだろうし、作り続けるべきなのだろう。

2011年9月10日土曜日

秩父宮


ラグビーシーズンの開幕を告げる、関東大学ラグビー対抗戦グループの秩父宮に、4年ぶりでわが母校が帰ってきた。オープニングマッチでいきなりの早稲田との対戦で、1部復帰の晴れ舞台として相手に不足はなさすぎ(笑)母校にとってはシーズンわずか1試合の秩父宮だが例年の楽しみだったので久しぶりに応援に駆け付けた。

この3シーズン2部に低迷したわが母校。校技であるラグビー部の復活を目指し、ここ何年かは高校日本代表の逸材も入部させたり積極的に補強を図り、昨シーズンは2部で圧倒的な優勝で入替戦も立教を下しての1部復帰であった。今年も花園で活躍した高校のスター選手が何人か加わり、こりゃ勝てないまでも早稲田に一泡吹かせるくらいのことはあるかも、と期待は膨らんでいたが、いざキックオフと同時に早稲田の鋭い突破になすすべもなく、トライの山を重ねられてしまった。

結果は12-69。軽くひねられてしまったという感じだ。FW戦で意地の2トライはしたものの、戦術眼も、テクニックも、激しさも、タックルもすべて明らかに点差以上に大きな差があった。やはり2部と1部の質の違いというか、やっているラグビーのすべてにおいて見劣りしてしまった。
それでも、久々の秩父宮で観る母校のジャージーは嬉しかったし、FW前3人が1年生という若い選手たちがこれから1部の戦いを重ねていく中でどれだけ伸びていくか楽しみでもある。
まあ、1部復帰即でいきなり勝てるとは思ってはいなかったが、点差は点差として次戦以降も頑張ってほしいと切に願う。

この日は日本ラグビー自体にとっても世界の壁に挑戦する日であった。青学×早稲田に続きニュージーランドで開幕したワールドカップの緒戦、日本対フランスがラグビーのメッカ・秩父宮のスクリーンでパブリックビューイングでの観戦イベントが開催されるため、大学の試合が終了した後も居残ってライブ中継を多くのラグビーファンとともに応援するお楽しみもあった。
日本はインターナショナルボードのこの強豪国に対して一歩も引かず魂の戦いを見せてくれた。後半、1時は21-25と追い上げ、場内を熱狂させた。これはひょっとしたら大変な歴史を目撃することになるかもしれないと思ったが、終了間際に体力が落ちたところで立て続けにトライを奪われ、終わって見れば21-47と大差をつけられてしまったのだが。

しかし、ラグビーはやはり面白い。最近はすっかりサッカーに興味の支軸が移ってしまったが、今日の秩父宮で過ごした1日は至福の時間でもあった。日本は次戦は大本命のオールブラックスとの対戦。母校は昨年度の覇者・帝京大戦との対戦である。
今年の秋はサッカーともども、ラグビーの結果でやきもきする日々が続きそうだ。

2011年9月7日水曜日

映画『東京オアシス』 - シネマトゥデイ


映画『東京オアシス』 - シネマトゥデイ
『マザーウォータ―』の小林佳奈監督、小林聡美主演の『東京オアシス』の試写に。
『かもめ食堂』以来の一連のプロジェクトで、ほんのりした時間の流れの中での逃避、再生へ向かう行程を3つのストーリーで静かに描いた抒情的な作品。正直言って自分的にはあまりドラマツルギーの無い90分余りの映像を観続けるのはちょっとしんどい。先日A誌の取材でインタビューした目黒シネマのM支配人が「当館が撮影場所に使われたんですよ」と熱く語られたため、確かにその映画館のシーンは興味深く観ることができたのだが…。
NODA・MAPで抜擢された新進女優の黒木華が知人の女性にあまりに似ていたのでそれなりに楽しめたが、まあ現在の疲れた女性の癒しにはいいのかも知れんが、どうもね。