2010年9月11日土曜日
マン・レイの創作の秘密を垣間見る
会期終了間近の「マン・レイ展 知られざる創作の秘密」を観に国立新美術館に出向く。今回は、遺族によって著作権管理を行っているマン・レイ財団が所有するマン・レイの制作物のほとんどすべてを公開したもので、2007年以来欧州をはじめ世界で巡回している大型企画である。特にエコール・ド・パリの時代以前のニューヨークで活動していた初期の作品の中には一般公開されたことのないものもあり、また日本だけで公開されるものも何点かあるそうである。400点に及ぶ制作物には絵画、グラフィックはじめオブジェや本人の愛用していた所蔵品まで幅広くなかなか見ごたえがある企画だったように思う。
つい最近、たまたま海野弘氏の著書『映画、20世紀のアリス』(フィルムアート社)を読んだばかりだったのだが、ジャン・コクトーのプライベートフィルムの論評において盛んにマン・レイの作品についても言及されていたので、すごく興味をかきたてられていたところだった。それが降ってわいたようにその作品、特に3本の短編映画「エマク・バキア」「ひとで」「サイコロ城の秘密」が観る機会ができたのは不思議なめぐり合わせを感じたし思わぬ僥倖であったといえる。
マン・レイはダダイズムやシュールレアリストとしての側面もあるが、写真家として実験的な作品だけではなく肖像写真家としてもすぐれた作品を残している。戦後40年代から50年代にハリウッドに戻ってから、また60年代に再びパリにもどってからの多士済々のポートレートは素晴らしい。個人的にはサティやピカソ、ヘミングウェイの肖像以上に、テレサ・ライトやジェニファー・ジョーンズ、エヴァ・ガードナーから始まってイブ・モンタン、ジュリエット・グレコ、カトリーヌ・ドヌーヴといった女優や歌手たちの濃い陰影のついたモノクロームの肖像写真にすごく魅かれた。
なんだかサティやコクトー、マックス・エルンスト、ポール・エリュアールらと親交を結んでいたわけなので、すごく昔の人のような気もしていたが磯崎新氏・宮脇愛子ご夫妻とも親しかったというのが意外な気もする。確かに1976年、86歳まで創作を続けていたその晩年のデザインアートなどは現在でも最先端のPOP感覚にあふれている。展覧会の副題である知られざる創作の秘密に少し触れられたような気がする豊饒な時間であった。
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