2010年6月27日日曜日

熱戦第3幕


グループリーグの対戦が2巡し、そろそろ16強にむけた星勘定が白熱しだした。優勝候補と目された欧州の名門が思わぬ苦戦を強いられ、南米勢の躍進、アフリカ勢の不調、アジアや新興国の健闘と下馬評を覆す波乱の展開が続く。そして、この3RDレグでいよいよ決勝トーナメントに駒を進めるチームが確定するが各組とも力の差が無いだけに最後まで予断を許さない。
以下観戦雑記。

6月22日
●フランス1-2南アフリカ
前回準優勝国も狂いだした歯車は修正のしようが無い。ウルグアイ、メキシコの他力頼みかつ大量点が必要な地元南アフリカは、彼らをサポートする圧倒的なブブゼラの音に後押しされ、序盤からかつての世界王者フランス陣内に攻め込みフランスは防戦に追われる。監督に暴言を吐いて追われたアネルカと彼に同調するキャプテンのエブラ他5人が入れ替わったチームは、もはや栄光のチームの面影はなかった。南アは前半CKからクマロのヘッドで先制、焦るフランスはゲームメーカーのグルキュフが一発退場くらいさらに苦境に立たされる。
たたみかける南アはマシレラが折り返しムペラがゴールに押し込み2点目。予選突破の最低条件が見えてきたこともあって南アはさらにかさにかかって攻める。後半、交代出場のマルダが前ががりになった相手の間隙をつきカウンターで1点を返し意地を見せるが、抵抗もそこまで。フランスはA組最下位という無残な結果の前にただ呆然としていた。南アも結局は2位には届かずに開催国としては初めて1次リーグ敗退が決定、不名誉な歴史を作ってしまったが、それでも強豪相手に胸を張れる戦いぶりではあった。この日の勝利に南アフリカ国民は幸福な一夜を送ったはずである。

●メキシコ0-1ウルグアイ
引き分けでも両チームとも2位以内が確定する試合だったが、お互いそんな思惑を吹っ切った手を抜かない激しい戦いを繰り広げた。攻守にバランスがとれ無失点でそつなく勝ち点を積んできたウルグアイに、すばやいパスワークで対抗するメキシコ。メキシコは何度となく好機を作るが決めきれずに一進一退の攻防が続く。前半終了間際、今大会絶好調のフォルランが右サイドから起点になってカバニにつなぎ、そのクロスをこれまた絶好調のスアレスがヘッドで先制弾を叩き込んだ。後半もメキシコは良く攻めたが、結局この1点をウルグアイが守り抜き1位突破を決めた。メキシコは得失点差で2位通過。

●ナイジェリア2-2韓国
引き分け以上で16強進出に燃える韓国、勝てば2位通過を決めることが出来るナイジェリアが生き残りをかけて激突した。序盤から韓国は果敢に攻めるが先手を取ったのはナイジェリア。右サイドのクロスをウチェが先制ゴール。やってはいけない先取点を与えた韓国はしかしひるむことなくキ・ソンヨンのFKを初戦に続き鹿島のイ・ジョンスが押し込み同点に。後半、パク・チュヨンが中央左から得たFKを直接ゴールの右隅に叩き込み逆転。これで窮地に立たされたナイジェリアは必死の反撃を試みる。守備固めに入ったキム・ナミルが相手のプレッシャーからか思わず痛恨のPKをとられてしまいアイエグベニにきっちり決められて追いつかれると、ナイジェリアは怒涛の攻めで勝利への執念を燃やし、韓国は必死に耐える。そして何とか持ちこたえた韓国は見事、開催地以外での16強に駒を進める結果に。

●ギリシア0-2アルゼンチン
主将のマスケラーノ、エースFWのイグアインを温存し余裕のアルゼンチン。堅い守りからチャンスをうかがうギリシア。アルゼンチンはメッシを中心に攻め続けるがギリシアの定評ある堅守になかなか得点できない。均衡を破ったのは後半32分、Ckからデミチェリスが頭で落とし、混戦から蹴り込む。ギリシアもなんとかロングボールで対抗しようとするが、メッシをはじめアルゼンチンの怒涛の攻撃に防戦一方。終了間際にメッシが強烈なシュート、GKがはじいたところをパレルモが決め止めを刺す。アルゼンチン磐石で一位通過。

6月23日
●スロベニア0-1イングランド
2節終わって勝ちが無いイングランドは予選敗退の危機。さすがに気合が入ったのか監督批判で謝罪したテリーもこの日は身体を張って魂の戦いを展開。前半右サイドのミルナーから中央で合わせたデフォーがGKハンダノビッチの頭上を破り先制弾を叩き込む、初先発の抜擢に見事応えた値千金のゴールだった。その後もルーニーのシュートがバーを叩くなと攻めながらも得点が出来ないイングランドは、スロベニアに決定機を作られながらも、守り抜き2位通過で何とか面目を保った。

●アメリカ1-0アルジェリア
勝ち点が均衡し星のつぶし合いが続くこの組で激戦を展開してきたアメリカも勝たなければ予選落ちしてしまう。アルジェリアはアフリカ予選でも粘り強い戦いをしてきただけあって接戦にも耐えうるメンタルとテクニックでここまで検討してきた。序盤からアメリカは攻め立てるがアルジェリアは堅守でカウンターで逆襲する。息詰まる戦いはスコアレスのまま時間が経過する。時計は90分を回りアメリカは予選敗退の無情なホイッスルが鳴らされる、まさに最後のワンプレーで奇跡を起こす。GKからのフィードを受けたドノバンが一直線に高速ドリブルでゴールを目指し、右サイドのアルティドールへ流し、中央のデンプシーに流れるような低いクロスを一瞬の間に展開し、デンプシーは乾坤一擲のシュートを放つがGKボルヒがはじく。そこに起点のパスを送ったドノバンが稲妻のように走り込みゴールに突き刺した。地獄から天国へ。この劇的なサヨナラ弾によってアメリカは1位通過をつかみとった。サッカーはこれだから面白い。

●オーストラリア2-1セルビア
ドイツに衝撃の0-4負けを食らったオーストラリアはその後よく立て直し得失点差で予選抜けも見えてきた。セルビアも全く同様でこの試合にすべてがかかる。お互いガチンコの対決は白熱し互角の戦いが展開する。後半オーストラリアはロングボールをトップのケネディに放り込み高さで崩そうとするが、この空中戦が功を奏しケーヒル、ホルマンが立て続けにゴール。しかしながらセルビアが投入したパンテリッチが追撃のゴールを決める。両者最後まで死力を尽くすがこのまま1点差でオーストラリアが勝利したものの、得失点差で及ばず、両イレブンともにピッチで茫然と膝を折っていた。これもワールドカップである。

●ガーナ0-1ドイツ
セルビア戦に敗れ背水の陣を引くドイツは、アフリカ勢で唯一好調を保ちアフリカ期待の星となっているガーナ戦はグループリーグの大一番に。前半ガーナは持ち前の身体能力と個人技で攻勢に出るが、フィニッシュに今一つ正確性を欠く。後半、ドイツ若手の期待の星エジルが右サイドのミュラーからのパスをゴール左に素晴らしいミドルを決める。21歳のトルコ系の若き才能の一発でドイツは1位通過を確保、粘ったガーナは1点差を守り2位で16強入りを決めた。

6月24日
●日本3-1デンマーク
日本は堅い守備と果敢な攻撃と早い切り替えで高さのデンマークに対抗。序盤はトマソンを捕まえ切れずに危ない局面が続いたがDF陣はすぐに修正、逆にカウンターから松井、長谷部と決定機も作れるように。前半17分に本田、30分に遠藤と2本の芸術的なFKでゴールし圧倒的に優位に立った。デンマークは引き分けでは上がれないので3点のアドバンテージを持つことに成功したのである。デンマークは高さでパワープレーを仕掛けてくる。たまらずPKを与え1点を失ったが、間隙を突いた本田が岡崎に流し試合を決める3点目をゲット、日本はサッカー史に残る開催地以外での初の16強入りという金字塔を打ち立てた。



●カメルーン1-2オランダ
優勝候補の呼び声高いオランダは前半からモチベーションの上がらないカメルーンを攻め、ファンぺルシ―が先制。後半カメルーンがPKを得てエースのエトーが冷静に決めていったんは追いつくが、負傷で戦列から離れていたロッベンが復帰しいきなり強烈なシュートでポストを直撃、詰めていたフンテラールの決勝ゴールをおぜん立てした。点差こそ最少だったが危なげなく首位通過、ロッベンの復帰でトーナメントに最強の切り札が加わった。

●スロバキア3-2イタリア
2試合で勝ち星なしの勝ち点2と崖っぷちのイタリアが悲壮な覚悟で登場したが、前半早くも不用意なパスをカットされスロバキアのビテクに先制弾を許してしまう。後半、負傷で今大会出場ができなかった司令塔のピルロを投入し勝負をかけるが、再びビテクにクロスを合わされ失点してしまう。負けられない意地で圧倒的に攻めるがゴールは遠い。ディナタ―レのゴールでやっと1点をもぎ取るが、焦るイタリアを見透かしたようにスロバキアにカウンターを仕掛けられ逆に失点し突き放されてしまう。あきらめないイタリアは終了間際にクアリャレラが1点を返すがここで力尽きる。前大会のチャンピオンチームは伝統の守備陣の崩壊でグループリーグで敗退するという屈辱に沈み、スロバキアは分離独立後、歴史に残る16強入りを果たした。

●パラグアイ0-0ニュージーランド
ここまで堅い守備で検討してきたニュージーランドがアウェイのユニフォーム“オールブラックス“で登場。しかし南米の強豪パラグアイの実力の前に圧倒され終始守勢を強いられる展開。サンタクルス、べラ、カルドソと強力なFW陣に対しニュージーランドは5バックで対抗し何とか守り抜いた。パラグアイは引き分けでもそつなく首位通過。ニュージーランドは予選落ちではあったが3分け無敗の大健闘で大会を締めくくった。

6月25日
●ポルトガル0-0ブラジル
大会きってのスーパースター、C・ロナウド擁するポルトガルが王国ブラジルに挑戦。前節の退場でカカ―を欠いたブラジルだったがルイス・ファビアーノが再三ポルトガルゴールを脅かすものの得点ならず。逆に後半はロナウドのスピードで決定機を作られてしまうが、歴代代表でも守備に秀でるブラジルは何とか相手エースを抑え込んでスコアレスで痛み分け。死の組といわれた組み合わせだったが両国で1,2位通過を順当に分け合った。

●北朝鮮0-3コートジボワール
ブラジルには健闘したもののポルトガルに大敗を喫した北朝鮮は、そのショックを引きづってしまったかコートジボワールに序盤から圧倒される。14分にヤヤ・トゥ―レ、20分にはドログバの強烈なシュートからこぼれたボールをロマリックが頭で押し込み一気に失点を重ねてしまう。その後、鄭大世を前線に残し全員で守備に回った北朝鮮にてこずりなかなか追加点が入らなかったが後半37分にカルーが3点目を奪い万事休す。鄭大世もドリブルで持ち込み好機を作ったが不発。彼らの44年ぶりの冒険は終わった。

●チリ1-2スペイン
スイスに敗れ窮地に立ったスペインがグループ最大の敵・好調のチリに挑む。F・トーレス、ビジャの2トップ始めイニエスタ、シャビ、シャビ・アロンソとタレント集団が華麗なパス回しをかなぐり捨て泥臭く勝利を狙う。前半ビジャが先制し優位に立つとやっと余裕も出たのか、華麗なパスワークが通りだしイニエスタが見事な追加点を挙げる。チリも豊富な運動量でよく対抗、後半早々に1点を返すが、退場者で一人減ったチリはスペインを崩しきれず、このまま試合終了。優勝候補の呼び声高かったスペインはなんとか16強入りを果たし面目を保った。

●スイス0-0ホンジュラス
スペインを破る快挙を遂げたスイスもチリに手痛い1敗をくらい、この試合の勝利にトーナメント進出をかけるが、試合を支配しながらも決定機で精度を欠き得点できない。逆にホンジュラスのカウンターを仕掛けられピンチに立つ局面も出てくる。焦るスイスもついに得点を奪えないままスコアレスドローに終わり、全員ががっくりとピッチに崩れ落ちた。この痛み分けで両チームともグループリーグ敗退が決定。


結局この3rdレグでグループリーグが終了した結果、決勝トーナメントの組み合わせは以下の通りに、
A組1位ウルグアイ対B組2位韓国、C組1位アメリカ対D組2位ガーナ、E組1位オランダ対F組2位スロバキア、G組1位ブラジル対H組2位チリ、D組1位ドイツ対C組2位イングランド、B組1位アルゼンチン対A組2位メキシコ、F組1位パラグアイ対E組2位日本、H組1位スペイン対G組2位ポルトガル

いよいよ大会も最高潮を迎える。

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