2010年6月27日日曜日

熱戦第3幕


グループリーグの対戦が2巡し、そろそろ16強にむけた星勘定が白熱しだした。優勝候補と目された欧州の名門が思わぬ苦戦を強いられ、南米勢の躍進、アフリカ勢の不調、アジアや新興国の健闘と下馬評を覆す波乱の展開が続く。そして、この3RDレグでいよいよ決勝トーナメントに駒を進めるチームが確定するが各組とも力の差が無いだけに最後まで予断を許さない。
以下観戦雑記。

6月22日
●フランス1-2南アフリカ
前回準優勝国も狂いだした歯車は修正のしようが無い。ウルグアイ、メキシコの他力頼みかつ大量点が必要な地元南アフリカは、彼らをサポートする圧倒的なブブゼラの音に後押しされ、序盤からかつての世界王者フランス陣内に攻め込みフランスは防戦に追われる。監督に暴言を吐いて追われたアネルカと彼に同調するキャプテンのエブラ他5人が入れ替わったチームは、もはや栄光のチームの面影はなかった。南アは前半CKからクマロのヘッドで先制、焦るフランスはゲームメーカーのグルキュフが一発退場くらいさらに苦境に立たされる。
たたみかける南アはマシレラが折り返しムペラがゴールに押し込み2点目。予選突破の最低条件が見えてきたこともあって南アはさらにかさにかかって攻める。後半、交代出場のマルダが前ががりになった相手の間隙をつきカウンターで1点を返し意地を見せるが、抵抗もそこまで。フランスはA組最下位という無残な結果の前にただ呆然としていた。南アも結局は2位には届かずに開催国としては初めて1次リーグ敗退が決定、不名誉な歴史を作ってしまったが、それでも強豪相手に胸を張れる戦いぶりではあった。この日の勝利に南アフリカ国民は幸福な一夜を送ったはずである。

●メキシコ0-1ウルグアイ
引き分けでも両チームとも2位以内が確定する試合だったが、お互いそんな思惑を吹っ切った手を抜かない激しい戦いを繰り広げた。攻守にバランスがとれ無失点でそつなく勝ち点を積んできたウルグアイに、すばやいパスワークで対抗するメキシコ。メキシコは何度となく好機を作るが決めきれずに一進一退の攻防が続く。前半終了間際、今大会絶好調のフォルランが右サイドから起点になってカバニにつなぎ、そのクロスをこれまた絶好調のスアレスがヘッドで先制弾を叩き込んだ。後半もメキシコは良く攻めたが、結局この1点をウルグアイが守り抜き1位突破を決めた。メキシコは得失点差で2位通過。

●ナイジェリア2-2韓国
引き分け以上で16強進出に燃える韓国、勝てば2位通過を決めることが出来るナイジェリアが生き残りをかけて激突した。序盤から韓国は果敢に攻めるが先手を取ったのはナイジェリア。右サイドのクロスをウチェが先制ゴール。やってはいけない先取点を与えた韓国はしかしひるむことなくキ・ソンヨンのFKを初戦に続き鹿島のイ・ジョンスが押し込み同点に。後半、パク・チュヨンが中央左から得たFKを直接ゴールの右隅に叩き込み逆転。これで窮地に立たされたナイジェリアは必死の反撃を試みる。守備固めに入ったキム・ナミルが相手のプレッシャーからか思わず痛恨のPKをとられてしまいアイエグベニにきっちり決められて追いつかれると、ナイジェリアは怒涛の攻めで勝利への執念を燃やし、韓国は必死に耐える。そして何とか持ちこたえた韓国は見事、開催地以外での16強に駒を進める結果に。

●ギリシア0-2アルゼンチン
主将のマスケラーノ、エースFWのイグアインを温存し余裕のアルゼンチン。堅い守りからチャンスをうかがうギリシア。アルゼンチンはメッシを中心に攻め続けるがギリシアの定評ある堅守になかなか得点できない。均衡を破ったのは後半32分、Ckからデミチェリスが頭で落とし、混戦から蹴り込む。ギリシアもなんとかロングボールで対抗しようとするが、メッシをはじめアルゼンチンの怒涛の攻撃に防戦一方。終了間際にメッシが強烈なシュート、GKがはじいたところをパレルモが決め止めを刺す。アルゼンチン磐石で一位通過。

6月23日
●スロベニア0-1イングランド
2節終わって勝ちが無いイングランドは予選敗退の危機。さすがに気合が入ったのか監督批判で謝罪したテリーもこの日は身体を張って魂の戦いを展開。前半右サイドのミルナーから中央で合わせたデフォーがGKハンダノビッチの頭上を破り先制弾を叩き込む、初先発の抜擢に見事応えた値千金のゴールだった。その後もルーニーのシュートがバーを叩くなと攻めながらも得点が出来ないイングランドは、スロベニアに決定機を作られながらも、守り抜き2位通過で何とか面目を保った。

●アメリカ1-0アルジェリア
勝ち点が均衡し星のつぶし合いが続くこの組で激戦を展開してきたアメリカも勝たなければ予選落ちしてしまう。アルジェリアはアフリカ予選でも粘り強い戦いをしてきただけあって接戦にも耐えうるメンタルとテクニックでここまで検討してきた。序盤からアメリカは攻め立てるがアルジェリアは堅守でカウンターで逆襲する。息詰まる戦いはスコアレスのまま時間が経過する。時計は90分を回りアメリカは予選敗退の無情なホイッスルが鳴らされる、まさに最後のワンプレーで奇跡を起こす。GKからのフィードを受けたドノバンが一直線に高速ドリブルでゴールを目指し、右サイドのアルティドールへ流し、中央のデンプシーに流れるような低いクロスを一瞬の間に展開し、デンプシーは乾坤一擲のシュートを放つがGKボルヒがはじく。そこに起点のパスを送ったドノバンが稲妻のように走り込みゴールに突き刺した。地獄から天国へ。この劇的なサヨナラ弾によってアメリカは1位通過をつかみとった。サッカーはこれだから面白い。

●オーストラリア2-1セルビア
ドイツに衝撃の0-4負けを食らったオーストラリアはその後よく立て直し得失点差で予選抜けも見えてきた。セルビアも全く同様でこの試合にすべてがかかる。お互いガチンコの対決は白熱し互角の戦いが展開する。後半オーストラリアはロングボールをトップのケネディに放り込み高さで崩そうとするが、この空中戦が功を奏しケーヒル、ホルマンが立て続けにゴール。しかしながらセルビアが投入したパンテリッチが追撃のゴールを決める。両者最後まで死力を尽くすがこのまま1点差でオーストラリアが勝利したものの、得失点差で及ばず、両イレブンともにピッチで茫然と膝を折っていた。これもワールドカップである。

●ガーナ0-1ドイツ
セルビア戦に敗れ背水の陣を引くドイツは、アフリカ勢で唯一好調を保ちアフリカ期待の星となっているガーナ戦はグループリーグの大一番に。前半ガーナは持ち前の身体能力と個人技で攻勢に出るが、フィニッシュに今一つ正確性を欠く。後半、ドイツ若手の期待の星エジルが右サイドのミュラーからのパスをゴール左に素晴らしいミドルを決める。21歳のトルコ系の若き才能の一発でドイツは1位通過を確保、粘ったガーナは1点差を守り2位で16強入りを決めた。

6月24日
●日本3-1デンマーク
日本は堅い守備と果敢な攻撃と早い切り替えで高さのデンマークに対抗。序盤はトマソンを捕まえ切れずに危ない局面が続いたがDF陣はすぐに修正、逆にカウンターから松井、長谷部と決定機も作れるように。前半17分に本田、30分に遠藤と2本の芸術的なFKでゴールし圧倒的に優位に立った。デンマークは引き分けでは上がれないので3点のアドバンテージを持つことに成功したのである。デンマークは高さでパワープレーを仕掛けてくる。たまらずPKを与え1点を失ったが、間隙を突いた本田が岡崎に流し試合を決める3点目をゲット、日本はサッカー史に残る開催地以外での初の16強入りという金字塔を打ち立てた。



●カメルーン1-2オランダ
優勝候補の呼び声高いオランダは前半からモチベーションの上がらないカメルーンを攻め、ファンぺルシ―が先制。後半カメルーンがPKを得てエースのエトーが冷静に決めていったんは追いつくが、負傷で戦列から離れていたロッベンが復帰しいきなり強烈なシュートでポストを直撃、詰めていたフンテラールの決勝ゴールをおぜん立てした。点差こそ最少だったが危なげなく首位通過、ロッベンの復帰でトーナメントに最強の切り札が加わった。

●スロバキア3-2イタリア
2試合で勝ち星なしの勝ち点2と崖っぷちのイタリアが悲壮な覚悟で登場したが、前半早くも不用意なパスをカットされスロバキアのビテクに先制弾を許してしまう。後半、負傷で今大会出場ができなかった司令塔のピルロを投入し勝負をかけるが、再びビテクにクロスを合わされ失点してしまう。負けられない意地で圧倒的に攻めるがゴールは遠い。ディナタ―レのゴールでやっと1点をもぎ取るが、焦るイタリアを見透かしたようにスロバキアにカウンターを仕掛けられ逆に失点し突き放されてしまう。あきらめないイタリアは終了間際にクアリャレラが1点を返すがここで力尽きる。前大会のチャンピオンチームは伝統の守備陣の崩壊でグループリーグで敗退するという屈辱に沈み、スロバキアは分離独立後、歴史に残る16強入りを果たした。

●パラグアイ0-0ニュージーランド
ここまで堅い守備で検討してきたニュージーランドがアウェイのユニフォーム“オールブラックス“で登場。しかし南米の強豪パラグアイの実力の前に圧倒され終始守勢を強いられる展開。サンタクルス、べラ、カルドソと強力なFW陣に対しニュージーランドは5バックで対抗し何とか守り抜いた。パラグアイは引き分けでもそつなく首位通過。ニュージーランドは予選落ちではあったが3分け無敗の大健闘で大会を締めくくった。

6月25日
●ポルトガル0-0ブラジル
大会きってのスーパースター、C・ロナウド擁するポルトガルが王国ブラジルに挑戦。前節の退場でカカ―を欠いたブラジルだったがルイス・ファビアーノが再三ポルトガルゴールを脅かすものの得点ならず。逆に後半はロナウドのスピードで決定機を作られてしまうが、歴代代表でも守備に秀でるブラジルは何とか相手エースを抑え込んでスコアレスで痛み分け。死の組といわれた組み合わせだったが両国で1,2位通過を順当に分け合った。

●北朝鮮0-3コートジボワール
ブラジルには健闘したもののポルトガルに大敗を喫した北朝鮮は、そのショックを引きづってしまったかコートジボワールに序盤から圧倒される。14分にヤヤ・トゥ―レ、20分にはドログバの強烈なシュートからこぼれたボールをロマリックが頭で押し込み一気に失点を重ねてしまう。その後、鄭大世を前線に残し全員で守備に回った北朝鮮にてこずりなかなか追加点が入らなかったが後半37分にカルーが3点目を奪い万事休す。鄭大世もドリブルで持ち込み好機を作ったが不発。彼らの44年ぶりの冒険は終わった。

●チリ1-2スペイン
スイスに敗れ窮地に立ったスペインがグループ最大の敵・好調のチリに挑む。F・トーレス、ビジャの2トップ始めイニエスタ、シャビ、シャビ・アロンソとタレント集団が華麗なパス回しをかなぐり捨て泥臭く勝利を狙う。前半ビジャが先制し優位に立つとやっと余裕も出たのか、華麗なパスワークが通りだしイニエスタが見事な追加点を挙げる。チリも豊富な運動量でよく対抗、後半早々に1点を返すが、退場者で一人減ったチリはスペインを崩しきれず、このまま試合終了。優勝候補の呼び声高かったスペインはなんとか16強入りを果たし面目を保った。

●スイス0-0ホンジュラス
スペインを破る快挙を遂げたスイスもチリに手痛い1敗をくらい、この試合の勝利にトーナメント進出をかけるが、試合を支配しながらも決定機で精度を欠き得点できない。逆にホンジュラスのカウンターを仕掛けられピンチに立つ局面も出てくる。焦るスイスもついに得点を奪えないままスコアレスドローに終わり、全員ががっくりとピッチに崩れ落ちた。この痛み分けで両チームともグループリーグ敗退が決定。


結局この3rdレグでグループリーグが終了した結果、決勝トーナメントの組み合わせは以下の通りに、
A組1位ウルグアイ対B組2位韓国、C組1位アメリカ対D組2位ガーナ、E組1位オランダ対F組2位スロバキア、G組1位ブラジル対H組2位チリ、D組1位ドイツ対C組2位イングランド、B組1位アルゼンチン対A組2位メキシコ、F組1位パラグアイ対E組2位日本、H組1位スペイン対G組2位ポルトガル

いよいよ大会も最高潮を迎える。

2010年6月25日金曜日

輝かしい朝


嬉しい朝を迎えた。
サッカーを長く見続けてきて良かったと思った。
そしてその輝かしい一瞬の時を、南アフリカの地で共有できていないことを猛烈に悔やんでいる。
2010年6月24日(ルステンブルグ/ロイヤル・バフォケンスタジアム)グループEサードレグ、日本3-1デンマーク。

正直言って、岡田武史率いる日本代表が今大会ベスト16に進出できるとは露ほどに思っていなかった。
単にチームが大会直前まで調子が上がらないということは関係なしに、カメルーンにしろ、オランダにしろ、デンマークにしろ今までのサッカーのレベルから見てその差は歴然としていた。対戦国の監督とかは日本も警戒しなければならないと言いながら勝ち点3は計算していたはずだし、FIFAの関係者だって世界のメディアにしたって、このE組は死の組に近い(上位3チームのだが)顔合わせだと思っていたに違いない。

“世界を驚かそうぜ”という岡田が唱えた合言葉が、本当に世界に衝撃を与えたのである。


試合を振り返るのは、もうすでに嫌っというほどメディアのニュースで繰り返して報道されているのであえてここには記さないでおくが日本サッカー史に新たな1ページを書き加えた代表選手たち、スタッフ、関係者たちに心から祝福したいと思う。

そしてもう4日後には新たな戦いがすぐ控えている。書き換えた歴史にさらに輝かしいページが加えられていくように願ってやまない。

2010年6月23日水曜日

熱戦第2幕へ


ワールドカップはグループリーグのセカンドレグが終了。
連日の朝まで生テレビで観るほうの体力も消耗戦を強いられてきたが、セカンドレグで欧州の強豪の明暗がはっきりしだした。フランスはじめイングランド、ドイツもピンチに立たされ、アフリカ勢もカメル―ンが早くも脱落、新興国の検討もあって各組混戦の様相でますます目が離せない。
日本の行方も気になるが、各国の戦いぶりでワールドカップの盛り上がりもヒートアップしてきた。
試合見ながらTwitterを打ち込むことも多くなったが、ワールドカップ関連のTLの盛り上がりも凄い。
以下セカンドレグの観戦雑感。


16日
●南アフリカ0-3ウルグアイ
前半、ウルグアイのディエゴ・フォルランの目を瞠るミドルが炸裂し、それまでほぼ互角の展開を見せていた南アフリカに動揺が走る。後半は焦る南アにウルグアイの巧みなゲーム運びでことごとくチャンスの芽を摘まれていくうちにPKを与えてしまい、フォルランに追加点を決められてしまう。地元の声援を受け打開を図ろうとした“バファナバファナ”は結局なすすべなく終了間際に決定的な3点目で、失意の完封負けを喫してしまう。この敗退により開催国の16強入りは極めて厳しい立場に追い込まれてしまった。

17日
●アルゼンチン4-1韓国
韓国の果敢なアタックで立ち上がりは興味深い展開だったが、メッシのスーパーなボールキーピングとテべスのエネルギッシュな切り込みで徐々に流れはアルゼンチンに。FKからの朴主永の不運なオウンゴールも相手のプレッシャーがじわじわ効いてきた結果なのかもしれない。さらにイグアインがヘッドで追加点を捕った時に、これで韓国も終わったかと思いきや、前半終了間際にイ・チョンヨンが相手DFの軽率なプレーから1点を返してゲームは面白くなった。しかしながら後半もメッシを止めようがなく、人数をかけさせられ対応に追われるうちに、イグアインがごっちゃんゴールでハットトリックを難なく達成。メッシ一人で韓国のあわよくばの野望を打ち砕いた。

●ナイジェリア1-2ギリシア
ナイジェリアは立ち上がりにFKがそのままゴールに飛び込み優位な出だしができ、その後もゲームを支配する。ところが接触プレーにいら立っていたカイタが相手DFのトロシディスを蹴り上げ一発レッド。この愚かな行為がナイジェリアに傾いていた流れを変えてしまう。数的優位に立ったギリシアが高さを利用してゴール前にロビングボールを挙げてチャンスを作っていく。前半終了間際サルティンギディスがこぼれ球からギリシアW杯史上初ゴールで同点にした後、後半はギリシャが俄然攻勢に立つ。トロシディスがCKから決勝ゴールを押し込んで、ギリシアが歴史的な1勝を勝ち取った。これによってアルゼンチン以下横一線に並んだ3チームの2位争いが予断を許さなくなってきた。

●フランス0-2メキシコ
第1戦を引き分けたフランスはこの試合を落とすと窮地に立たされるが、メキシコはかなりの難敵。ドメニク監督はリベリーをトップ下に張らせるシステム変更で臨むが、メキシコもドス・サントスやエルナンデスといった元気がいいFWがフランスDFの裏を狙う。後でわかったが試合運びがうまくいかない苛立ちからハーフタイムにアネルカが監督を批判し後代させられるバタバタ劇が発生。攻守のバランスも悪く後半ついにエルナンデスに裏を取られ失点してしまう。こうなるとチームの意思がばらばらになったまずい展開でフランスはなすすべなく相手にPKを献上、ベテランのブランコに難なく決められ万事休す。フランスの病状は重い。

18日
●ドイツ0-1セルビア
初戦に圧勝したドイツと手痛い1杯を喫したセルビア、セルビアの負けられないコンタクトプレーで試合はヒートアップし、前半のうちにドイツの得点源の一人クローゼが2枚のイエローで退場という事態に。ヨバノビッチが動揺するドイツの間隙をぬって先制弾を叩き込むと、一人少ないドイツもポドルスキを中心にパワープレーを仕掛けるがなかなかゴールに結びつかない。後半に入りドイツは相手のハンドでPKを得る絶好のチャンスを迎えるがポドルスキが何と止められてしまう。後半の時間の経過とともに数的優位に立ったセルビアにかわされドイツは痛い敗北を喫してしまった。セルビアはガーナに負けたショックから立ち直り、なんとか16強入りに踏みとどまった。

●スロベニア2-2アメリカ
スロべニアは前半ビルサが中央から見事なゴールで先制、試合を優位に支配する。さらに前半終了間際に高さで追加点をもぎ取ってゲームをほぼ手中にしたかに見えた。しかしアメリカは苦境に立つと異常な根性を発揮する。後半開始早々にドノバンが切れ込んで魂のゴールが炸裂。その後もドノバン、デンプシー、アルティドールが繰り返しゴールに肉薄、ついにこらえきれなくなったスロベニアはブラッドリーに決められ追いつかれてしまう。こうなると勢いはアメリカ、何度となく決定機を作られるがスロベニアは何とか耐え抜き引き分けに持ち込んだ。アメリカのファイティングスピリッツと団結心は観る者の心を熱くさせる。

●イングランド0-0アルジェリア
初戦を分けてしまったイングランドがアルジェリアには確実に勝点3を稼ぎたいところだったが、アルジェリアも巧みなテクニックとスピードで対抗、一筋縄ではいかない健闘ぶり。タレントに勝るイングランドも何度となく攻めるものの元琉球FCのGKボルヒの攻守にゴールを割れない。最後はトップにクラウチを投入しパワープレーを試みるが最後まで得点ならず。2試合連続の引き分けでイングランドは窮地に立たされた。

19日
●オランダ0-1日本
日本最大の敵に対しチームワークと組織的守備で対抗、圧倒的にポゼッションを取られながらシュート数はオランダを上回る善戦ぶりだったが、後半疲労とともにバックラインが下がりスペースを与えスナイデルに強烈なシュートを決められ金星ならず。

●ガーナ1-1オーストラリア
初戦で大敗したオーストラリアは格上のガーナ相手に負けられない戦いを強いられる。ところが立ち上がりホルマンがゴール前に詰めてオーストラリアは先手を打つことに成功、これでゲームの行方が面白くなる。しかしながら前試合のケーヒルに続き、この試合でも主力のキーウェルがハンドで一発退場をくらいPKで失点してしまう。その後ガーナの個人技とパスワークでプレッシャーをかけられたオーストラリアは数的劣勢に耐えなんとかドローに持ち込んだ。ドイツのよもやの敗北でこのグループの行方も混沌としてきた。

●カメルーン1-2デンマーク
日本に手痛い1杯を喫したカメルーンが得点源のエトーを右サイドからセンターに移し、積極的に仕掛ける。開始10分に中央からエトーが見事に決めて、早速エトー効果が表れたが、デンマークもロメンダ-ル、ベントナ―の高さとスピードで対抗。前半のうちにこのコンビで最後はベントナ―がフィニッシュし同点に。後半さらにロンメダ-ルの攻撃にカメルーンDFは対応に追われていたが、ついに鮮やかなファインゴールを決められてしまい、“不屈のライオン”カメルーンは早くも敗退が決定してしまった。しかしながらデンマークは最少得点差の勝利ということで日本との決戦で勝つことを義務付けられてしまう。

20日
●スロバキア0-2パラグアイ
南米2位のパラグアイがその能力を見せつけ、スロバキアのフィジカル頼みのサッカーをテクニックと速さで翻弄。危なげなく得点を重ね、最後まで相手に主導権を渡すことなく勝つ点3をゲット。16強入りに大きく近づく。

●イタリア1-1ニュージーランド
参加国中最弱の評価のニュージーランドだったが、初戦の終了間際にスロバキア相手に見事な同点弾で勝ち点1を拾っただけに、優勝候補相手にも臆せず守りを固めてカウンターでチャンスをうかがう。さすがに圧倒的にボールは支配されるが前半早々、FKからのロビングを名手カンナバーロがマークを外されスメルツによもやの先制弾を押し込まれてしまう。反撃に出たイタリアも前半30分を経過しやっとデ・ロッシが相手エリア内でPKを得る。これをイアクインタが確実に決める。圧倒的に攻めるイタリアの逆転は時間の問題かと思われたがニュージーランドの高さを生かしての必死の防戦とGKパクストンのセーブでゴールが決めきれない。逆に散発的だがカウンターをしかけられ失点のピンチも飛び出す始末。攻めに攻めたイタリアだったが時間の経過とともに焦りが見え始め攻撃も強引になり相手DFに跳ね返されてしまいついにタイムアップ。ニュージーランド今大会最大の番狂わせで、イタリアは2戦終わって勝利なし!予選敗退の大ピンチに立たされてしまう。

●ブラジル3-1コートジボワール
本命ブラジルがアフリカ勢最強と目されるコートジボワールと相まみえたが、序盤互角の試合運びからカカ―、ロビーニョの華麗なパス回しでブラジルは徐々にエンジンをかけ始める。ルイス・ファビアーノが技ありのファインゴールを突きさし先制すると、ブラジルの強さを見せつけるような連続した分厚い攻撃でエラーノ、ファビアーノとゴールを重ねていく。後半エース、ドログバが一矢報いるシュートを炸裂させるがコートジボワールの反撃もここまで。カカ―の退場は余計だったがブラジルがなんなく難敵を料理した。

21日
●ポルトガル7-0北朝鮮
初戦王者ブラジルに大善戦した北朝鮮が、66年大会以来の因縁の相手ポルトガルに挑戦。立ち上がりは北朝鮮も良く攻め上がっていたが、徐々にポルトガルの個人技と速さの対応に追われだす。前半は先制されたものの何とか1点でしのぎ後半の反撃が期待されたが、シモン、アウメイダと立て続けに得点を許すと、DF陣の集中が切れてしまい次々とゴールを決められてしまう。ここまで無得点だったCロナウドも得点し終わってみれば7-0の大差。北朝鮮のリベンジは地力の差で返り討ちにあってしまった。この大敗に北朝鮮のメンツはぼろぼろ、帰国後選手が迫害されるのではないかと心配になってしまう。




●チリ1-0スイス
チリは本当にスピードあふれる果敢な攻撃力を誇る好チームだ。優勝候補のスペインに土をつけて意気上がるスイスが相手だったが、アグレッシブでサボらないサッカーでボディブローを打ち続けるように攻撃を仕掛ける。守りを固めたスイスも前半で退場者を出しさらに劣勢を強いられる。後半粘り強い攻撃が実りチリのマルク・ゴンザレスがクロスに頭で合わせ値千金のゴール。反撃に出たスイスを抑え、勝ち点を積み上げ早くも16強入りを確かなものにした。

●スペイン2-0ホンジュラス
初戦で躓いてしまったスペインもホンジュラスには星を落とせない。序盤から変幻自在のパスワークが復活しホンジュラスを圧倒する。前半ビジャが3人抜きでフィニッシュし見事な先制弾を決め本領発揮。ホンジュラスの抵抗も散発で終わり、多彩なパスワークで試合を支配し続けビジャの2点目で試合を決定づける。スペインはこの復調でなんとなく予選突破の道筋が見えてきた。次は好調チリが相手、好ゲームが期待される。

2010年6月21日月曜日

週間呑みアルキスト5.31~6.20


●6月1日
昔同じ職場のTG氏のご尊父が亡くなられたという訃報が届き、通夜列席のため池上線の石川台にある斎場に出向く。普段なかなか乗らない路線なので早めに到着したこともあって商店街を「ぶらり沿線の旅」気分で散策する。なかなか閑静な住宅街で生活環境は良い感じだ。適度に開発もされていないので昭和の面影も随所に残っている。通夜の後、会場で合流したK社関係の人たちKB氏、MT氏、K映画関係のAK氏、旧衛星放送事業で同僚だったSZ氏、YS嬢ら懐かしい面々で軽く呑んで帰ることになり、来たときとは逆の目黒線奥沢駅方面に歩く。奥沢駅前のビル地下にある居酒屋『丸十 ひものや』で献杯、思わぬ同窓会とあいなった。生ビールのあと焼酎のボトルを入れ、結構飲み食いし勘定を頼むと一人頭1000円弱、世に“せんべろ”という言葉がはやりだしていることは知っていたが、確かにデフレは進行中のようだ。本当は安いといって喜んでばかり入られないのだが…。

●6月4日
先月発売になったワールドカップの増刊号の製作に携わったスタッフを集め、媒体社主催の打ち上げをしていただく。当日は日本代表が大会前にテストマッチとしてコートジボワールと戦うということもあって、大型スクリーンを店内に設置してある神保町『エスペリア』に総勢13人が集合し、まさにワールドカップの雰囲気たっぷりの宴会に。幸い売れ行きも良いそうで会費も媒体社もちにしていただいた。しかしながら宴会自体は楽しかったが肝心の日本代表は相変わらずパッとしない、今後の売り上げの伸びに多少なりとも影響があるかと心配になる。解散後有志で2次会に『シャルルボイル』、『白木屋九段下店』とハシゴして気がつけばすっかり空は白み始めている。すでに始発も動いており電車の中でうとうとしながら朝帰り。

●6月8日
電子出版に向けた制作会社の勉強会に出席した後、新宿三丁目『うおや一丁新宿三光町店』で懇親会。I-PADの発売がこの業界をどう変えるのか、またわれわれに何が出来るのか呑みながらも議論は尽きない。

●6月9日
K社時代に同僚だったSG嬢が早期退職で会社を辞めたということで、挨拶に来社かたがたささやかなお疲れ様会。すずらん通り裏の日本蕎麦屋『柳屋』でSG嬢を囲んでKJ氏、デザイナーAki氏らゆかりのある仲間で昔話に花が咲く。酒豪のSGさんに付き合って日本酒をがんがん飲んだため、最後はすっかり覚えていないが翌日2日酔は免れないはず。SGさん長い間ご苦労様、これからもよろしくお願いします。

●6月11日
ワールドカップ南アフリカ大会がついに開幕。仕事を早々に済ませ早めに帰宅、帰りがけ南アフリカ産のピノノワールの赤、シュナンブランの白とワインを仕入れて帰る。この期間中はテレビに釘付けとなるので、結構ワインの酒量は上がりそうだ。せっかくのメタボ健診の食事指導でダイエットの効果も出始めていたが、呑まずにこの人生の祝典を楽しむにはいられない!リバウンドはやむなし。

●6月17日
大型プロジェクターを期間中に入れることになったという連絡を受け、新宿二丁目の『T's Bar』に韓国対アルゼンチンの試合を観戦に行く。普段はJAZZが流れる店だが集客のためというよりTDマスターの個人的趣味といった感が強い。サッカー好きの常連のEB社ST氏も到着したので同席して試合に集中する。多少のゴーストがあったが呑むうちに気にならなくなる。後から入ってきたお客さんもにわかサッカーバーに変身していたので驚いていた。アナログを地デジに変えて画質も向上するというので期間中、また行くことになりそうだ。

●6月18日
ワールドカップ増刊号を手伝ってもらったKJ氏が来社、どこかで試合を観戦しながら呑みましょうということで、昨日の今日なので『T’s Bar』を回避して新宿に新しく出来たサッカーバー『bona punch』に浮気、セルビア対ドイツ戦を観戦することに。日本戦じゃないので大丈夫だろうとたかをくくって予約を入れずに行ったのだが、新宿スタジアムと銘打っているだけに予約の団体客で試合開始の頃には満員に。たまたま隣の席に座った若い男女の集団が試合そっちのけで大騒ぎ、ブブゼラ並の騒音ですっかり熱戦に水を差された。やはり真のファンは若者相手のサッカーバーなんかで試合を見るもんじゃないと痛く反省。Tマスターやっぱり大人は大人の店で見るのがヨロシです。

2010年6月20日日曜日

歴史的な惜敗


ワールドカップE組セカンドレグ、日本はグループ最強の敵オランダと対戦した。
まさに国際大会でのフル代表同志として戦うのは初めて、ガチンコのオランダにどこまで通用するのか、日本が本腰を入れて世界を目指したここ20年の成果が試されているといってよい歴史的対戦だったと思う。

ガチンコとはいえ相手の主力アリエル・ロッベンを怪我で欠いたのは、日本DF陣の大きな脅威が少なくとも30%は負担が減った行幸だと思うが、それにしても現在のサッカー界の最高峰を行くチームであることに変わりはない。

カメルーン戦の勝利で、メディアも、テレビで浮かれる若いサポーターと称する連中もにわかにオランダにもし勝てば、というような論調まで出だしたが、正直そんな甘い相手ではない。特にカメルーン戦までの日本代表チームの出来を考えると、上向きになったとはいえ3点以上の点差をつけられて惨敗は必至なのではと内心覚悟をしていた。それぐらいチームとしての伝統と経験、スキル、フィジカルすべてにおいて差があるのは少しサッカーを知っている人間なら容易に理解できたはずである。

オランダ自体も組み合わせが決まって今日までの間の星勘定で、日本からは勝ち点3は固いという前提で動いていたはずだし、首脳陣や選手たちの日本評も試合前の外交辞令に過ぎず楽勝ムードでいたことは間違いない。実際昨年の親善試合では、ちょっと手こずったが終わってみれば3-0の楽勝だったという事実も、イメージの端からぬぐえないのは当然だろう。

しかし大会前、結果が出ぬまま本番を迎えた日本代表の危機感は相当なものであったはずだ、メディアの論評もさることながら、この大会で何も成果を残せないまま終わってしまえば、それこそ日本サッカーのここまでの歴史を逆戻りさせることにもなりかねない。選手たち自らもそんな重圧の前でやるべきことは何なのかチームとして再確認するとともに、大会直前で苦肉の策で試したシステムが機能したことによって、絶対的エースであった中村俊輔をベンチに下げ、最近までスタメンだった内田も楢崎も中村憲剛もベンチを暖めさせ、それでも団結してひとつの集団として戦う意識がベクトルを同一方向に向けさせたのだろう。
その結果が、堅く守る、サボらないで動き続ける、機を見て積極的にカウンターを狙う、ということを徹底し試合の内容は決して美しくはなかったもののカメルーンとの緒戦に勝利を収めるという、最高の結果を勝ち取っていたのである。

オランダにとっては、前回の親善試合での対戦と南アフリカに来てからの日本とは一味違っていることは、試合が始まってからすぐに気がついたかもしれない。日本の相手の良いところを終始消しにかかる堅守とときに両サイドから松井、大久保が長友、駒野と連携してチャンスをうかがう姿勢に、圧倒的にボールを支配しながらもなかなか思うように決定機を作れずにいる。こんなにバックパスでボールをまわすオランダを見るのは初めての経験だ。確かにオランダは攻めあぐねているし、嫌がる戦いを日本は意識してかどうかやっているように見える。

前半を失点ゼロに防いだ日本は、気がついてみるとポゼッションは圧倒的に差がつけられているがシュート数がむしろ相手を上回った。モハメド・アリがかつてジョージ・フォアマンに見せたロープ・ザ・ドープといった感のある乾坤一擲の戦いぶりが効を奏していると思っていいのだろう。

そして後半、日本もひょっとしたら、先に点を取れるかもしれないといった、希望的観測すら生じ始めつつあったが、やはり体力的な問題もあったのだろう、徐々にバックラインが相手のプレッシャーに下がり始める。セットプレーからファン・ぺルシーにわたったピンチになんとか身体を張るものの、スナイデルにセカンドボールを拾われ目の覚めるような強烈なミドルを決められてしまった。ジャブラニの変化もあったのだろうがそのボールスピードゆえ川島はセーブしきれなかった。岡田監督は前線の交代でなんとか勝ち点を拾おうと岡崎、玉田を投入したが、やはりこの代表チームの得点力ではオランダのゴールをこじ開けるには力が不足していた。これがやはりオランダとの埋めようの無い差である。

0-1の最少得点差の敗北。勝ち点は0という事実しか残らなかったが、しかしながら大会のグループリーグの生き残りにおいては大きな意味を持つ1敗である。次のデンマークがオランダ同様容易ならざる欧州の強豪であることは確かだが、お互いのオランダ戦とのスコアで優位に立った結果、引き分けでもグループ2位の芽が出てきたからである。カメルーン戦、オランダ戦の戦い方から見て、勝ち点を取るのはまったく考えられないことではないからである。
“自信がついた”インタビュールームで語る各選手たちの表情は疲労困憊した敗者のそれでなく、悔しさに満ちた表情であることが最大の収穫であるように思う。
彼らは意識してはいなかっただろうが、実は日本サッカー史上、この敗戦は歴史の逆行の危機を踏みとどまっただけでなく、新たな歴史の行き先を決定付けることになる可能性に満ちた戦いであったのではないか。

まだワールドカップのベスト16に向けた決戦が控えているし、メディアははやくもこの試合の評価よりグループの星取に関心が移ったのも仕方がない。デンマークの戦力分析もいっせいに喧々諤々始まりだした。
しかしながら長く日本のサッカーと付き合ってきた身として個人的には、昨夜のオランダとの0-1の惜敗は、後年語り継がれることになる戦いであったと、ひそかに思っているのである。

そう、でもサッカーはこれからも続く。
デンマークとの本当の意味での決戦が待つ。さらに次の試合も日本代表の栄光の歴史を刻む戦いであって欲しいと祈るのみである。

2010年6月17日木曜日

熱戦続く


日本代表のジャイアントキリングの興奮冷めやらぬ中、熱戦が続くワールドカップグループリーグのファーストレグはついに一回り。
以下試合の観戦雑感であります。

14日
●グループE「オランダ2-0デンマーク」
日本と同組のヨーロッパ勢の対決。ボールを支配するオランダに対し守備的にカウンターを伺うデンマーク。前半はこう着状態、後半に入ってよく守っていたデンマークが痛恨のオウンゴール。攻めに出ざるを得ないデンマークだったがエースストライカーのベントナーも負傷で下がり攻め手を欠く。オランダの交代で入ったアフェライ、エリアらのスピードある攻勢でカイトが止めを刺す。オランダ順等に勝ち点3を獲得したのだがロッベン抜きでもグループリーグではやはりずば抜けた強さであることを印象付けられる。

●グループF「イタリア1-1パラグアイ」
イタリアのファンタジスタ、ピルロは怪我で欠場。それでもイタリアが圧倒的にゲームを支配する。引きながら耐えていたパラグアイもロングボールで反撃。ワンチャンスをものにして劣勢のパラグアイが先制してしまいゲームはこれで面白くなった。後半も攻めるイタリア、守ってカウンターのパラグアイという構図は変わらないがセットプレーからデ・ロッシがやっとゴールをこじ開けなんとか追いつく。イタリアは例年優勝候補の一角を占めるが、前大会優勝国としては不安な出だし。戦力的にもオランダやスペインと比べると見劣りしてしまう。フランスとともに“古い井戸(byオシム)”と化したか?

15日
●グループF「ニュージーランド1-1スロバキア」
今大会のアウトサイダー筆頭のニュージーランドが初出場とはいえ分離前は欧州の強国のひとつであったスロバキアに挑む。しかしながら技術、経験の差はいかんともしがたく圧倒される中、なんとか1点のビハインドで耐えていたが、この集中を切らさずに我慢を重ねていた健闘が実を結ぶ。最後のロスタイムでパワープレーで上がっていたDFリードのヘッドで殊勲の同点弾。オールホワイツの勝ったかのような歓喜が微笑ましい。次戦もこの勢いで臆することなくイタリアにチャレンジして欲しい。

●グループG「コートジボワール0-0ポルトガル」
死の組といわれるG組の星のつぶし合いの第1戦は白熱の好試合。エリクソン監督の就任で個人技に組織力を持ち込んだコートジボワールがC・ロナウド擁するポルトガルに互角の展開。特にロナウドには徹底マークで仕事をさせず、後半、骨折から驚異的に復活したドログバの投入で勝負をかける。ポルトガルも最後まで攻撃の手を緩めず一進一退の攻防が繰り広げられ結局スコアレスで痛みわけ。グループリーグにはもったいないようなハイレベルの戦いに感嘆。

●グループG「ブラジル2-1北朝鮮」
国歌吹奏で感激のあまり号泣したチョン・テセの姿を見ればやはり肩入れしたくなるのが人情。そんなこちらの思い以上に、テセはじめ北朝鮮イレブンの果敢な戦いに胸が熱くなる。ボールポゼッションは6対4でブラジルが圧倒、怒涛の攻撃にアン・ヨンハッを軸に気力で跳ね返す北朝鮮。もっともランキングが離れたカードも弱者の健闘で前半はなんと0-0で折り返す。後半マイコンの技ありの先制弾で均衡が破られると耐えていた糸が切れたかのようにエラーノに得点を許してしまう。疲労困憊の北朝鮮だったが終了間際テセがロビングボールを落とし走りこんできたチ・ヨンナムが目の覚めるようなシュートを決めて意地を見せる。66年のイングランド大会に続き北朝鮮が再び世界を驚かせる。

16日
●グループH「ホンジュラス0-1チリ」
南米予選2位通過のチリはアグレッシブな攻めのサッカーを展開。ファインプレーを連発したGKはじめよく守っていたホンジュラスだったがやはりサッカーの質が1枚上手であるのは否めない。1点しか取れなかったがチリの順当勝ち。TBSも日本戦の代償でつかまされた感のあるカードだったがゴールデン枠の放送にしては地味ながらファンにとっては凄く面白かった。

●グループH「スペイン0-1スイス」
優勝候補筆頭のスペインが、雨あられとシュート見舞いながら、スイスの堅守にどうしても1点が取れない。逆に後半早々数少ないチャンスにスイスがカウンターからフェルナンデスが値千金の先制ゴール。焦るスペインに身体を張って守り抜くスイス。怪我のトーレスも投入し総攻撃を仕掛けるが無情にもタイムアップ。スイスが緒戦で大金星の勝ち点3。今後スペインはチリ、ホンジュラスに取りこぼすことなく勝ちぬけられるのか?波乱の展開で大会の行方はさらに面白くなった。

2010年6月15日火曜日

ブルームフォンテ―ンの凱歌


●グループE「日本1-0カメルーン」
一夜明けて、メディアは日本代表の報道一色。
やれチームは迷走だの、監督交代だの、全然期待がもてないとボロカスだった論調も、一転本田はヒーローになり岡田は名将になってしまう。

やはり勝たなければ意味がない、ということを改めて実感させられた。

昨夜のカメルーン戦での勝利も、90分間泥臭く、またクレバーに相手の攻め手を消し続けた選手たちの地道な試合ぶりで、体力的にも日本の運動量がガクンと落ちる後半残り30分を集中を切らさず身体を張って守り切った決して華麗とは言い難い勝利だった。
それでもこの勝ち点3は天国と地獄ほど価値が異なる考えうる限り最良の結果であるし、同時にワールドカップを参加だけに終わらせないための最低限の課題をクリアしたにすぎないとも言える。

岡田のコメントは味気なかったが、勝ち点3といってもまだグループリーグを抜けるために何かを得たわけでないことは確かなので、指揮官として正直な心情なのだろう。さらにオランダ、デンマークと日本よりはるかに格が上の国々との戦いが続くのだ、それがワールドカップの厳しさだし世界最高峰の大会の魅力である。

本田は確かに何か持っているかもしれないし、松井の切り返しと正確なフィードは素晴らしかった。
長友も攻めを犠牲にしてエトーに決定的な仕事をさせなかったし、阿部のアンカーも効きまくっていた。
長谷部の鼓舞は観ているこちらも心が奮い立ったし、センターバックの2人もカベに徹していた。大久保も、駒野も、川島も、遠藤も、岡崎も、稲本も、矢野もやるべくことをやりおおせたことの結果が1-0の結果となって報われた。
先はまだまだ見えはしないが、今日一日だけはブルームバーグの夜空に上がった凱歌に身をゆだねていてもいいはずだ。それだけの価値とそれを甘受する資格を彼らは獲得したのである。

2010年6月14日月曜日

ついに開幕、眠れぬ1ヶ月の始まりだ


いや~、もうついに開幕しちゃってからサッカーな毎日で、夜中騒いで朝方眠っての生活パターンが始まってしまいました。
金曜、土曜日は用もないのに南アに行ってしまったかどうか、確認の電話が3件も入る。行きたいのは山々なのだが先立つものも無いし、行ったところで街中で呑んだり騒いだりもできない試合以上の楽しみも不可能な特殊な地域だし、2012年のユーロのためにも資金も体力も温存すると決めた。ということなので、今回はテレビに専念するぞ、と何度も自分にも言い聞かせております。 よって本当に日本にいるかどうかの確認はこの場を借りて“行かないから”とあらためて表明しておきますw

ということで、11日の開幕以来すでにグループA~グループDの初戦が噂にたがわぬ強烈なブブゼラ音のもとで行われたが、やはりどの試合も素晴らしい。技術的には欧州CLのほうが世界一にふさわしいというが、国を背負うというプライオリティと独特なテンションが、なんともフットボール愛好者を至福感に包み込む、まるで合成向精神薬のような効き目があるな、ほんと。

以下、11日から土日の観戦雑記。

11日
●グループA「南アフリカ1-1メキシコ」
オープニングゲームは開催国の南アフリカがどこまでメキシコに食い下がれるのかというポイントだったが、前半は予想通りメキシコが試合を優位に支配していた。ところがシャバララの目の覚めるようなファインゴールで一転南アが俄然攻勢に入り、試合は南アペースに。メキシコは押されながらも何とか試合を振り出しに戻し勝ち点1を分ける。ブランコ、マルケスらベテランの老獪な経験値に南アの勢いもかわされた格好。大会のオープニングを飾るにふさわしい好ゲームだった。
●グループA「ウルグアイ0-0フランス」
フォルランvsリベリー、スアレスvsアネルカ、実力伯仲で試合も一進一退。途中から投入されたアンリはペナルティエリアで相手のハンドを得たかに見えたが認められず、因果応報というやつか。西村主審グッジョブ。この試合のドローでグループAの行方は混沌としてきて、一番面白い展開になってきた。

12日
●グループB「韓国2-0ギリシア」
イ・ジョンス、パク・チソン。日本になじみの深い2選手の見事なゴールで2004年の欧州王者に快勝。まったく危なげない試合振りで韓国史上最強の定評を証明した。次がアルゼンチン、ナイジェリアと強豪との対戦を残すもどちらかを食って16強へ、という筋書きが見えるほどの底力を感じる。


●グループB「アルゼンチン1-0ナイジェリア」
今大会の華メッシが実力の片鱗を見せたが何度となく撃ったシュートはことごとくゴールに嫌われる。スコア的には緊迫したがアルゼンチンがもっと楽に勝てた試合。メッシやベロンよりマラドーナの一挙手一投足に注目が集まる。存在感は現役時と変わらないのが笑える。
●グループC「イングランド1-1アメリカ」
開始早々のジェラード兄さんの一発でイングランド圧勝かと思いきや、アメリカはDF陣の集中した守りと鋭いカウンターでほぼ互角の戦いを続ける。こういうチームには神も味方するのだろう、ジャブラニの不規則弾動でイングランドGKグリーンの痛恨のミスを誘う。運にも恵まれたがアメリカはもはや世界の強豪国と充分肩を並べるまでに成長したと見るべきだろう。


13日
●グループC「アルジェリア0-1スロベニア」
民族の英雄ジダンの観戦で張り切っていたアルジェリアだがスロベニアの堅い守りを崩しきれず。そうこうしているうちにスロベニアのなんでもないシュートにジャブラニの魔法がかかって手痛い失点。運にも見放されたがイングランド、アメリカに比べ両国ともレベル差を感じてしまう。波乱は起こせそうもないか。
●グループD「セルビア0-1ガーナ」
秘かにグループリーグ突破以上を狙うセルビアだったがガーナのエネルギッシュなアフリカンサッカーに痛恨のPK負け。アフリカびいきのブブゼラの怒涛の音量にすっかりやられてしまった。ドイツが図抜けているのでセルビアの上位進出の夢は厳しくなった。
●グループD「ドイツ4-0オーストラリア」
ポドルスキ、クローゼ、ポーランド系ドイツ人の爆発でアジアの強豪を一蹴。2002年のサウジ戦を思わせる見事なゴールラッシュ。日本もオランダに同じことをやられるような妙な不安にかられてしまう。

さてさて14日は評価は堕ちるところまで堕ちたわが代表の登場ということで 大会は個人的に最初のクライマックスを迎える。この結果次第で以降のワールドカップの盛り上がりに凄く影響するわけで、ホント頼むよ岡ちゃん!