2008年12月14日日曜日

牛のげっぷが問題といわれても


ポーランドのポズナニで開催されていたCOP14(気候変動枠組み条約締約国会議)が約2週間の協議をほぼ終了したが、京都議定書に続く地球温暖化対策の国際枠組み作りにほとんど進展はなかった。ほとんどの国が2020年までに25~40%の削減が必要との認識を持ちながらも途上国と先進国の溝は埋まることはないということのようだ。
今回特に事務局の報告書から明らかになったことのひとつが、農畜産業関連分野は工業や運輸部門に比べ削減対策が遅れており対策強化の急務が訴えられたこと。水田や畑などからは微生物の働きでCO2の20倍もの温室効果を持つメタンが発生することと、家畜の消化管で発生するガス=いわゆる牛のげっぷにも同様のメタンが含まれていて、さらには窒素肥料の利用でCO2の300倍の温室効果がある一酸化二窒素が発生するのだとか。驚くのは現在の農畜産分野での温室効果ガスの排出量は全体の10%相当に達していて、ここ十年で17%あまり増加しているという事実である。

当然この分野の排出は途上国がメイン(約75%)で、人口の増加、肉食の増加で排出は今後も増え続けてしまうのである。経済発展の途上にある国が先にその恩恵を甘受してきた先進国と同等の排出規制は不公平という理屈が国際的な枠組みを阻害しているのだが、途上国は今後の経済発展の工業部門の伸張ということだけではなく、すでに農業部門でも排出の増加が垂れ流されているわけだ。しかも先進国の食糧供給のためには途上国の農畜産業は前提でもあるゆえ、一概に対立の図式だけでは計れない。

以前民放の番組で、松村邦洋が牛のげっぷを吸い取るというオバカな企画をやっていたが、あながち的外れとはいえないところがかえって空恐ろしくなる。たかが牛のげっぷと笑い飛ばせない、事実、このニュースを伝えるロイター電の写真でメタンを集めるタンクを背負わされたアルゼンチンの牛の写真が掲載されていてびっくりした。
昨今のBSE問題で食の安全が問われたが、単に飼育されているだけで環境に悪影響を与えていると決め付けられては牛だって心外だろう。肥料の適正使用や、農地や飼料の改良で改善の道を探るしかないようだが、報告書では特に途上国への技術支援や排出量取引等の政策措置が重要と指摘しているそうである。

来年は丑年。
100年に一度の不況の嵐に見舞われている現在、少しは節制と環境問題も考え高い牛肉を控えてみるのも悪くないかもしれない。それでもお寒い懐具合のときは安くて早くてうまい吉野家は止めようがないけど。

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