長らく台湾に関わってきたものの、いままで行く機会がなかった馬場町祈念公園をやっと訪れることができた。台風の影響で雨模様が続く中、ふっと青空が顔を出し、南国に秋の気配が漂う日曜日の午後、MRTの古亭駅から歩くこと30分。広大な青年公園に隣接する淡水河の川べりにその地はあった。ここが1940年代後半から50年代に国民党政権に「反乱分子」の汚名を着せられた多くの人々が処刑された慟哭の場所である。
広場中央に土盛られたモニュメントには今なお花が手向けられ続ける。
白色テロの殉難者たちが滔々と流れる淡水河を眺めつつ銃口の前に立たされた時、胸に去来したのは何だったんだろう。そんなことを考えると胸が締め付けられてくる。
夜中に突然ジープが家の前に泊まる恐怖の中、誰もが沈黙を強いられた暗く長かった時代からすでに半世紀以上が経過した現在、広場を歓声を上げて走る親子連れの姿、のんびりと散歩する老人たち、耳にヘッドホンをつけジョギングに励む若者、どこにでもある平和な日曜日の午後の風景が、目の前にあることが逆に胸に沁みる。
どうかこの平和をいつまでも見守ってください、深く頭を垂れながらしばらく祈り続けた。
母国はその日、嵐の中の総選挙である。戦争への記憶はすでに薄れつつあり、危険な時代の風が吹き荒れる予兆におののいている。
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