「椿姫」をスタッフ気分で楽しむ
今年は作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ生誕200年のメモリアルイヤーなんだそうである。
という予備知識があったわけではないが、猛暑から逃れる目的もあって久々に試写に出向いた。
ヴェルディメモリアルイヤー企画なのだろう、2011年の南仏エクサン・プロヴァンス音楽祭でのオペラ「椿姫」の制作過程を追ったドキュメンタリー映画『椿姫ができるまで』(フィリップ・べジア監督)を鑑賞。
全編ヴェルディ作『椿姫」のリハーサル風景を克明に記録していくのだが、気鋭の演出家のジャン=フランソワ・シヴァディエの独創的な演出に対して、ヴィオレッタ役の世界最高峰の呼び声高いナタリー・デセイが、その表現に対する要求を自分のものとしてどんどんと形作られていく工程はたんなる記録映像にとどまらない劇的な面白さがある。
ルイ・ラングレ率いるロンドン交響楽団の楽団員や、もちろん出演陣もだがTシャツやポロシャツやらの普段着である。ところがリハとはいえ本格的に演じ、奏でているわけで実際に現場の舞台裏に立ち会って、あたかも自分が制作スタッフの一員になっているような錯覚に陥る。ナタリー・デセイの素晴らしき美声(!)を公演に先立って堪能できるのも、なんだか得したような気分になるから不思議である。
オペラにさほど造詣が深くなくても人間ドラマとしても十分に楽しめる作品だ。
9月28日からシアターイメージフォーラムにてロードショー。
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