2013年3月29日金曜日

デンマークの近世史も面白い





連日の業務試写はデンマーク映画『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(ニコライ・アーセル監督)。”愛と欲望の~”なんてサブタイトルがついてしまうと、なんとなく昼メロっぽい感じがするが、史実に沿った硬質な作品だ。

18世紀後半、フランス革命直前の啓蒙思想の波が押し寄せ始めたころのクリスチャン7世治下のデンマーク。ちょっと精神が不安定な国王の侍医として側近にとりたてられたのはヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセというドイツ人医師。この医師は開明的な自由主義思想の持ち主で娼館通いにつきあったりしてすっかり王のマブダチになってしまう。
イギリスから嫁いできたカロリーネ王妃はこの変わり者の王様と不仲でいつしか知性的なストルーエンセに魅かれ懇ろになってしまう。こうしてトップ二人を落とし摂政として宮廷内の権力を掌握したストルーエンセは保守的な貴族階級を退け次々と民衆に寄った改革を実現させていくのだが、出る杭は打たれるのである。王太后と結託した貴族階級から王妃とのスキャンダルをネタにネガティブキャンペーンの巻き返しにあい、ついには断頭台へ引き立てられてしまう。

ストルーエンセの早すぎた改革は一度は廃棄され中世に逆戻りしたものの、後の治世でつぎつぎと復活して近代への扉が開かれていくことになったということで、この話はデンマーク国民なら誰しもが学校で習う歴史物語だとか。ちなみにカロリーネ王妃との禁断の恋で出来てしまった王女の血統が現代のスウェーデン国王グスタフ2世まで続いているそうであるから、こういった意味でもストルーエンセの不倫もまた無駄には終わらなかったようだ。

監督のニコライ・アーセルは『ドラゴンタトゥーの女』の脚本で名をはせ、監督としては本作が3作品目。主演のマッツ・ミケルセンは『007/カジノロワイヤル』をはじめハリウッド作品でもちょくちょく顔を出すデンマークの国際スターで日本人でいえば山崎努っぽい感じで渋い。カロリーネ王妃を演じたスウェーデン人女優のアリシア・ヴィカンダーもキーラ・ナイトレイ主演の最新版『アンナ・カレーニナ』でキティ役に抜擢され今後が楽しみの美形。

デンマークの近世史の予備知識がなくても(私も世界史で大学受験したけど、この時代のデンマーク史はまったく知らないもんね)権力闘争につきものの陰謀渦巻く裏切り劇や、禁断のロマンスといったエッセンスがたっぷりで十分楽しめる。

4月27日よりBunkamuraル・シネマほかで公開。

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